2人の英雄
□第3話
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『…ふぅ……』
「悪ィな。…なんか色々」
『ううん…平気だよ……』
ははは…と遠い目をしたまま言えば、チッ…と大きく舌打ちをする轟くん。
「あのクソ親父……勝手に言いふらしやがって…」
『まぁ…ねえ……はは…』
「こんにちは。エンデヴァーの代理で挨拶にお伺い致しました、轟焦凍で「おお!焦凍くん!!」
「いやあ!久しぶりだ!大きくなったねえ!!」
「ご、ご無沙汰しております…」
「あら!エンデヴァーの息子さん!?まぁ…大きくなられて…!」
「おお、本当じゃ!前見た時はこぉんな小さかったのにのぉ…」
「子供の成長はあっという間ねぇ…。あら、そちらの彼女は…」
『は、初めまして!本日、轟焦凍くんの同伴で参りました!嘉風舞と申します!よろしくお願いしま「「嘉風!?」」
『ふぁっ!?ひゃ、はい…?』
「いや〜!エンデヴァーから聞いてるよ!焦凍くんの婚約者だってねえ!」
「『は?』」
「べっぴんさんじゃないの!」
「確かに、テレビで見るより美人ねえ…」
「いやあ…よかったねえ、焦凍くん」
「いえ!あの、彼女は…!」
「照れなくていいんじゃよ!さぁさ、こちらへ…」
「さ、あなたもいらっしゃい!ランチにしましょう!」
『えっ、ええ?!ちょっ!』
『(エンデヴァーさんも外堀から埋めるタイプなのか……)』
…遺伝だなあ。って言ったらすごい嫌そうな顔しそうだから言わないけど。
「…本当に悪ィ。俺は舞の意思を無視して婚約なんてしねえ。お前の意思を尊重する」
『…轟くん……』
「…俺は…お前の気持ちを最優先する」
『!』
だから、答えはいつでもいい。と薄らと笑った轟くんに、ありがとう。と言えば、代わりに手を繋がれた。
その後、ホテルでチェックインを済ませる轟くんをロビーで待っていれば、行くぞ。と呼ばれる。
『部屋どこなの?』
「…5階」
『結構上なんだねえ』
と、ついて行けばある部屋で止まる轟くん。鍵を回し、ここだ。と言った彼。
『?私の部屋?』
「あぁ」
『…轟くんの部屋は?』
「ここだ」
『…?』
「?」
『……え?待って、部屋一緒なの?』
「?同伴者なんだから部屋は一緒だろ」
『くっ…そ、そうだね…!!』
…当たり前のように部屋を別だと思っていた私はバカか…。そりゃ同伴者だから部屋は一緒……。
『(一緒……)』
「舞?」
『ボンッ)〜〜〜ッ//』
「おっ」
部屋に一緒に入れば、預けていた荷物が置かれていた。
「…そうだ、飯田から連絡があった。18時30分にセントラルタワーの7番ロビーに集合してくれって」
『えっ、そうなの?』
「"嘉風くんも一緒にな"って言ってる」
『あ、はい…。って、18時半!?』
「?あぁ」
時計を見ればもうすぐ17時45分を示していた。
『ま、待って!早く着替えなきゃだし、化粧と髪型と…!』
「そんな時間かかるか?」
『女の子はかかるよ!それに、もしヒールで歩かないと行けないならちょっと早めに出なきゃだし…!』
とりあえず用意始めよ!!と、すごい勢いで言ってしまったためか、若干引き気味の轟くんを急かす。
「舞、ドレスこれだ」
『!』
渡されたドレスを広げてみれば、オフショルタイプの水色のドレスで、胸元・肩から肘に掛けてシースルーでところどころに刺繍が入っている。
ウエストには少し太めのリボン、膝上くらいの丈まであるスカートの部分にも刺繍はあり、レースが重ねられていた。
『か、可愛い!ホントにいいの!?』
「あぁ…。あ、あとこれネックレスとイヤリングと髪飾り?と靴だ」
『うわあ、何から何までごめん…』
「…俺のやりてぇようにやるからいいんだ」
『?』
「洋服のプレゼントには意味がある、らしい」
『え?どんな意味?』
そう尋ねてみれば、パーティー終わってからにでも調べてみろ。と言われた。
…ってか、プレゼントってよりかはレンタルだよな…??え?
『(……洋服のプレゼントに意味なんてあったんだ……)』
はー。知らなかったなあ。なんて、呑気に思いながら洗面台へと向かい、ドレスに着替えて髪型を整える。
ケータイを見て簡単なヘアアレンジをした後、軽く化粧をし、もう一度服を整えてから、髪の毛と鎖骨周り、それと手首にシャンプーの匂いのボディミストと、さっきもらったネックレスとイヤリングを付けたところで、時計を見れば時刻は既に18時10分を示していた。
ガチャ…
『ごめん轟くん!待たせちゃって』
「いや…べ、つに………」
『?なに?』
何故か顔を背けた彼に、どうかした?ともう一度尋ねれば、チラリとこちらを一瞥した。
「……他の奴らに見せたくねえな」
『…へ?』
「すげえ、似合ってる」
『ーーっ!!』
「心做しか、なんかいい匂いもする」
クンクンと私の匂いを嗅ぐ轟くんに思わず身体を固くしてしまえば、何緊張してんだ?と薄らと笑いながら言った轟くん。
『いやっ!だって…轟くん、が……』
「?」
…そうだ、彼はクラスでもトップレベルのイケメンだ…スーツが似合わないわけがない……!
パッと全身が見えた彼の姿にドキリ、と胸が鳴る。
…いや、ほんと、白のスーツ着こなすってどういうこと…。
『…と、轟くんも…よく似合ってるね』
「あんま好まねえよ、この格好」
動きづれえし首が苦しい。と少しムッとした顔に、あ、まだ同い年の15歳の子供だよな。とようやく認識出来た。
『じゃあ行こっか』
「そうだな」
出る前にもう一度だけ身なりを整え、慣れないヒールに苦戦しながらも街を歩いてセントラルタワーへと目指す。
『……なんか、やっぱり、轟くんカッコイイんだね』
「?なにが?」
『いや、その…はは……』
先程からすれ違う人が皆轟くんを見てるから改めてイケメンの隣を歩いてるのだと自覚させられる。
…私は馬子にも衣装って感じだよな、ほんと…。
『(イケメンの隣歩いてすみません……)』
「……」
はぁ…と息を吐いたところで、ふわりと肩にかかる温もり。
『?別に寒くないよ?』
「違ぇ。周りの目がうぜえ」
『それ、私関係なくない?』
「…舞が見られてんだぞ?」
『え、私?いや、ないない!皆轟くん見てるし』
そう言えば、タワーまでだから。と肩を抱いて歩き出す轟くん。
『…歩きづらくない?』
「じゃあ繋いでくれんのか?」
手、と差し出された手を取り、歩いていけば驚いた表情の轟くん。
『いつも勝手に繋いでくるくせに、どうしたの?』
「……悪ィ」
『そう?』
クスクスと笑いながら言えば、笑うな。と額を小突かれた。
そしてその現場を飯田くんと緑谷くんが目撃していたのは数分後に知ることになった。