2人の英雄

□第7話
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『止まるよ!』


ボコん!と天井を突き抜けたところで、上手く着地し、当たりを見渡すとやけに静かだった。

とりあえず、乱れる呼吸を整え状況把握に努める。


「結局何階まで来たんだ…」

「知るか。最上階じゃねえことは確かだろ」

『170階くらいが目標だったんだけど…確かに、ここ何階だろ……』


当たりを見渡しながら歩いていると、端に見える扉。


『…ねえ、あれ非常階段に繋がる扉だと思う?』

「…そう言えば、ロビーから登った時の扉はあんな感じだったな」

「へえ、そうなのか…」

『もう潜入してんのはバレてるんだし、扉ぶっ壊して上がる?』


そうだな。と轟くんが納得すれば、勝手に決めんなやクソが!と勝己くんが文句を垂らす。


「うだうだ言ってられねえだろ」

「わーっとるわ」

「まぁまぁ、喧嘩すんなって」

『ほら行くよ。また警備マシンが来たら面倒だ』

「嫌味か!」

『……』


…嫌味だよ!さっき風で上に飛んだからいいものの、まさか警備マシン連れて私のとこまで来たとは思わなかったわ!

なんて、言えるわけでもなく、とりあえず扉を破壊して上へと登っていれば、ヒュー…と風を感じる。


『…風だ』

「え?」

『どっかから風が入ってきてる』

「…敵か?」

『わかんないけど……!!』


180階に来たところで、扉が開いてるのが見え、再び中へと入れば、所々に破壊された後の警備マシンが転がっていた。


『…もしかしたら緑谷くん達かも……』

「あぁ…急ぐぞ」


警備マシンの破片を辿っていけば、1箇所だけが月明かりで照らされていた。


『あそこから出たっぽいよ!』

「ああ」


急いで扉へと向かえば、大量の警備マシンがお茶子ちゃんに襲いかかろうとしているのと、その奥で宙に浮かぶ緑谷くんとメリッサさんが見えた。


『(やばい…!)お茶子ちゃ…!』

「退けクソがァァ!!!」


バッ!と飛び出した影に、驚きつつ、私も続いて攻撃をし、轟くんや切島くんとお茶子ちゃんの元へと向かう。


『お茶子ちゃん!大丈夫!?』

「怪我はねーか、麗日」

「うん、平気。デクくんとメリッサさんが今、最上階に向かってる!」

「ああ、見えてた。ここで、こいつらを足止めするぞ」

「俺に命令すんじゃねえ!」


轟くんが氷結を出し、そう言えば、勝己くんが呼応するように爆破で警備マシンを壊してく。


『勝己くん、何だかんだで轟くんに従順だね』

「アァ!?」

「コンビネーションもいいんだよな!」

「誰が!!!」


下で警備マシンを壊し続けていれば、なぁあぁあ!!と叫び、タワーから吹き飛ばされる緑谷くんとメリッサさん。


「デクくん!メリッサさん!」

「爆豪!プロペラを緑谷に向けろ!舞、いくぞ」

『!…うん!』


ジャケットを脱ぎ捨て、走り出す轟くんの後を追えば、私たちの前に爆破で壊されたプロペラが緑谷くんの方へと向く。

そして、轟くんの炎熱と同時に、熱を巻き上げるように空で風を起こせば、緑谷くんとメリッサさんがタワーに入るのが見えた。


『いった!入ったよ!』

「解除!」


中に入ったのを確認すれば、お茶子ちゃんが個性を解除し、今度は私たちと共に警備マシンと戦う。

――5人で戦うにしても、中々の数だったが、とりあえず上がってきた警備マシンを全て壊し、その場に座り込んだ。


『はぁ…はぁ……ようやく…休憩…』

「バテてんのかクソ女…ざまぁみろ」

『誰のおかげでここまで一直線で来れたと思ってんのよ…』

「大丈夫か、舞」

『うん。平気だよ』


皆はぁはぁと息が上がり、疲労が顕になる。


「それにしても…舞ちゃんが無事でよかったよ…」

『あー…うん、まぁね』

「でも、嘉風だいぶボロボロにされて…」

『切島くん!』


バッ!と口を抑えれば、むぐっ、とくぐもった声を漏らした切島くん。


「!…ほんまや…舞ちゃん、よく見たら怪我いっぱいしとる…ごめん……」

『違うよ!あの時はああするしかなかったんだし…それに、皆を救けるためには、誰かがあそこで足止めしなきゃダメだったから…。

今考えても、あの面子なら、個性的にも私が一番適任だったと思うから。だから、大丈夫』

「…それで舞1人だったのか」

『うん。…ねぇ、お茶子ちゃん。他のみんなとはいつ別れたの?』

「138階に着いた時だよ。今よりもっと多くの警備マシンが待ち構えてて…

私とデクくんとメリッサさんでここまで…」


徐々に暗くなる声に、私もゴクリと息を呑んだ。

…警備マシンだからそこまで乱暴にはされていないだろうけど、まだここに来れてないってことは、今ここへ向かってきてるか、若しくは警備マシンに捕まってしまったか…。


『(皆…大丈夫、かな…天井突き抜けないでちゃんと階段上がってたら、皆とも合流出来たはずじゃ…)』

「舞」


ギュッと手を握られ、名前を呼ばれれば、ハッとなった。


「大丈夫だ、アイツらなら」

『……』

「間違ってねえよ」

『…うん』

「!…そ、そうだよ!4人が来てくれなかったら、私も…デクくんやメリッサさんも捕まっちゃってたかもしれないし…」

『…お茶子ちゃん……』

「舞ちゃんは、間違ってない!大丈夫!」


うんうん!と力強く言ってくれたお茶子ちゃんに、ありがとう。と言えば、こちらこそだよ!といつもの笑顔で言ってくれた。

――と、そんな時だった。


「オイ!構えろ!」

「『!!』」


勝己くんの声が響き渡ると、再び出てきた警備マシン達。


「しつけえな…!」

『…仕方ない…この先を通すわけにもいかないし…』

「もうひと踏ん張りだな!」


互いに顔を見合わせ、背中を預けながらこちらへと集まる警備マシンに私たちは立ち向かった。
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