2人の英雄

□第6話
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なんとか階段を上り、120階の通路まで来たところで、"違和感"を口にした。


『ねえ!これ、どう思う?』

「?これ?」

『罠だと思わない?』

「ええ!?」


驚くお茶子ちゃんと上鳴くんに、百が続いた。


「私たち、誘い込まれてますわね」

「ああ」

「それでも、少しでも上に行くために、向こうの誘いに乗る」


緑谷くんの言葉に、全員がうん、と頷けば、最上階へ繋がる通路で止まる。

そこには、うじゃうじゃと待ち構える警備マシンがいた。


「なんて数なん…!」

『…もしかして、私たちのこと、気づいたんじゃない?』


雄英高校の生徒だ、って…。と言えば、恐らくな。と同意してくれた飯田くんや緑谷くん。


「!だから、閉じ込めるんじゃなくて、捕らえることにしたってことか!?」

『多分ね…』

「でも、そうなることはこちらも予想済みですわ」


百は屈むと、背中から出てきたのは大きな絶縁シート。


「予定どおり、プランAでいこう。上鳴くん!」

「よっしゃ、俺もやってやるぜ!」


私達がシートに入ったのを確認すると、飯田くんが上鳴くんの手を取り、ドアを蹴りあげた。

そして、エンジンでくるくると回転し出せば、遠心力で上鳴くんを警備マシンの中へと放り投げた。

飯田くんもすぐ様こちらに潜り込めば、上鳴くんがバチバチと全身に電気を纏いだした。


「くらえ!無差別放電130万ボルトォォ!」


上鳴くんが放電するも、警備マシンはそれを防ぎ、再び動き出そうとしていた。


「ちっ…なら200万ボルトォォ!!!」

「!バカ!!そんなことしたら…!!」


響香がそう叫ぶも、上鳴くんには届かず…。結局、


「ウェ〜イ」

「アホになっちゃうだろ……」

「でも、お陰で警備マシンを止めることが…」


ホッとしてら駆け寄ろうとした時、再び動き出した警備マシンはあっという間に上鳴くんを拘束した。


「上鳴!」

「頑丈過ぎだろ…!」

『仕方ない!とにかく助けなきゃ!』

「ああ!皆、プランBだ!」

「はい!」


百が胸元から創造で創り出したのは、通信干渉入りの発煙筒だった。

蓋を外し、それを警備マシンへと投げれば一気に煙が噴き出す。


「これで通信を妨害出来ますわ!」


私たちも発煙筒を投げ、峰田くんはもぎもぎで警備マシンを止める柵を作るも、他の警備マシンがそれを乗り越えてきた。


「しつけえ〜!!」

「くっ…!」


…こうなったら、警備マシンを壊すしか…。

と、構えたところで、行くぞ!緑谷くん!と、飯田くんと、緑谷くんが飛び出した。


「ワン・フォー・オール、フルカウル…フルガントレット!」


緑谷くんの右腕には赤い何かが付けられていて、彼はグッと右手で拳を作った。

そして、


「スマーッシュ!!!」


パンチを繰り出せば、凄まじい威力と風圧で警備マシンが吹き飛んだ。

そして、警備マシンと共に吹き飛んだ上鳴くんを、飯田くんがキャッチすれば、残っていた警備マシンを蹴飛ばした。


「耳郎くん!警備マシンは?」

「左からくる!」

「よし、右から進むぞ!」


飯田くんに続いて、私たちも急いで通路を賭ければ、上へと繋がるフロアへと出た。

私達は再び階段を使い上がって行くと、133階に辿り着く。

通路を駆けていれば、何かが来るような気がした。


『……』


一度振り返るも、特に何もない。

考えすぎか…?と思った矢先だった。

ボコん!と一瞬盛り上がる横の壁。


『っ!響香!!』

「えっ!?なに!?」


響香を押し出せば、次の瞬間、身体に絡まる"なにか"。

そして、壊れた壁へと徐々に引きずられる。足で踏ん張るも、気を抜けばすぐに引っ張られる程の力だった。


「舞!!」

『っ、いいから!!進んで!!!』

「でも嘉風が!!」

『わ、たしは…大丈夫…だから…!!』


ググッ…と力を入れるも、ズズズ…と引きずられる。

…くそっ…なんだこれ…!

凝固で作った氷で破壊を試みるも、先に壊れるのは氷で。


『(ダメ、だ…!これ以上は…!)』


そう思っていれば、再び何かが響香の元へと飛んでいく。


『!!』


思わず空で響香を軽く飛ばせば、ソレは壁に張り付いた。


「いってて…」

『ごめん響香ッ!でも!狙いは響香だ!!だから早く行って!!!索敵要員が居なくなったら、この先進みづらくなる!!』


そう声を上げるも、でも…!と立ち止まる皆。

その様子に、ギリッと歯を鳴らした。


いいから進め!!みんなを救けるんでしょ!!!


そう声を張り上げれば、眉を顰めながら、いこう…!と飯田くんが言う。


「?!飯田!?あんた、何言って…!」

「行くぞ!!」

「ちょっ!飯田!」


飯田くんが響香の手を引くと、それに続いて峰田くんも走り出す。


「…っ、舞!私も…『百!!』


立ち止まる百に、力強く名前を呼んで、何も言わずに、無言で頷けば、キュッと唇を噛み締めた彼女。


「…舞ちゃん、信じとるよ…」

『うん、大丈夫』


お茶子ちゃんが百の手を取り走り出せば、心配そうに見つめていた緑谷くんや、メリッサさんも走り出した。

全員が去ったのを見送り、なんとか右手を皆の走った方へ向け、巨大な氷壁を作れば、足が浮いて私はそのまま壁の中へと引っ張られた。
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