2人の英雄
□第6話
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中へと引きずり込まれれば、解放される身体。
いてて…と立ち上がると、そこには恐らく、会場に居たであろう敵が待ち構えていた。
「くっそ…よくも邪魔しやがって…!」
『あら、やっぱり響香が目的だったのね…』
「まあいい…まずは、てめえからだ!!」
『!?』
また何か伸びてくるのかと思えば、今度は白い塊が飛んできた。
とりあえず避ければ、その場所がカチン!と固まる。
『(なんの個性だコレ…!)』
「む…動きが早いな…なら、これでどうだ!!」
『くそっ…!』
ビュンビュンと飛んでくるソレに、氷壁を作りとりあえず防ぐも、ガシャン!!と氷が削られていく。
『(さっきの、飛んできた時は柔らかそうだったのに…今度は硬い…!?)』
「チッ…小賢しい…さっさと出てこい!"粘土"で固めてやる!!」
『…ッ!なるほど、粘土ね…!』
そう言われ、思い出したのはあのストーカーの男。
…なんでこうも、個性の相性が悪い相手と当たるかなぁ…!!
もう限界を迎えた氷壁から離れて、こちらから空で風を飛ばせば、再び柔らかい塊が飛んできて、空がそれを2つに分裂させる。
『最悪っ!』
ギリギリで避け、今度は融解で水を放つも、相手も粘土で壁を作り、それを防いだ。
『チッ…(個性が通じない…!どうにかしなきゃ…)』
何か使えるものはないかと、部屋を見渡すも、物という物が見つからない。
「悪いな!ここに使えるもんは置いてねえよ!大人しく捕まれ!!」
『〜〜っ!腹立つ!!』
個性を使い、攻防を続けていれば徐々に上がってくる息。
時間が経てば経つほど、細かい粘土を避けきれず、ところどころに切り傷が増え、服も破れていく。
『はぁ…はぁ……(ここに来るまでも走り続けてたからか…体力が……)』
「おっと、ようやく体力切れか?なら、これで終いだ!」
『!!』
ギリギリで避けたつもりだったが、ふわりと浮いたスカートの部分が奴の粘土で、壁と引っ付いてしまった。
『(やばい…!)』
そう思った瞬間、粘土を鋭利のある棒に変え、こちらへと向かってきた。
肩に刺さる瞬間に身体をズラせば、肩の部分が破れ、右腕の裾だけ綺麗に抜けた。
すると、男が拳を上げ、私の腹を1発殴る。
『ーーーっ!がはっ!!』
「へっ…舐めてっからだ…!」
『…っ!このっ…!』
服ごめん!と思いつつ、すぐ様出せる限りの風で奴を吹き飛ばす。
「ぐはっ!」
遠くに飛んでいってる間に、スカートを破ってその場から離れると、再び飛んでくる粘土。
『はぁ…っ、げほっげほっ…くっそ…女の子相手に本気で殴りやがって……!』
とりあえず空中に足場を作り、ひたすら粘土を回避するも、徐々に凝固が作れなくなってくる。
『!嘘でしょ…!水蒸気少ないの…!?』
1歩次の氷へと移った瞬間、ぴちゃん、と音を立て、足がすっぽ抜けた。
『(やばっ…!)』
下を見れば、一面に敷かれる粘土。
…さっきまで無闇に粘土を飛ばしてたわけじゃないのか…!
落ちるまでの数秒で、ひたすら考える。
どうすれば、この粘土を回避できる?水蒸気ももう少ないから凝固は使えない、融解を使ったとしてもほぼ無意味だ。空で切り裂く?でももし分裂させられたら余計に増やしてしまうだけだ。
『(ダメだ…!このままじゃ……!)』
と、その時壁の隅にあるスプリンクラーが見えた。
『(あれだ…!)』
空で壁に向かって飛び、右の拳に風を纏わせ、スプリンクラーを壊せば、一気にすごい勢いで出てきた水。
「なんだ!?」
『(これなら…!)』
一面粘土の地面に着きそうになる瞬間、一瞬で粘土の上に氷を張れば、とりあえず足場を作ることが出来た。
『はぁ…はぁ…残念だったね…』
「チッ…まぁいい、再び同じものを作ればいいだけだ!」
『そうはさせない!』
水が出続けてる間に小さな氷壁をいくつも作り、自分の姿を晦ましながら、相手との距離を縮めていく。
「うざい氷だ!」
『それは、どーも!!』
「なに!?上!?」
上から飛び降り、風で勢いを付け、思い切り殴りかかれば、かはっ!と声を漏らして飛んでいく敵。
飛んでいった方へ、距離を詰めれば両腕を凝固で地面とくっつけ、動かせないようにする。
『さて、と…どうする?』
氷の矢を作り、顔の真横に刺せば、ビクッ!と肩を揺らした敵。
『…さすがに刺すのはヒーローとしてどうかとも思うから、氷漬けにしようかと思うんだけど、どうしたい?』
「…ふん…やはりまだまだガキだな!」
『……』
後ろから飛んでくるであろう粘土を氷壁で防げば、ぼとり、と落ちた粘土。
『何だかんだで、あんたも体力切れ?固まんないね』
「くそっ…舐めやがって…!」
そう言って動かそうとした指も固めれば、くっ!と顔を歪めた敵。
私を蹴りあげようと脚を上げるも、それを躱して敵から距離を取った。
『まだやるの?』
「こんのクソガキが!!」
『!!』
びゅん!と勢いよく飛んできた粘土は、私の身体共壁へと張り付いた。
『んぬ…!』
「剥がれねえよ!しっかり固めたんだからよォ!てめぇの個性じゃ、どうしようもねえな!」
詰めが甘ぇよクソガキ!!と、言われ、はぁぁ…と息を吐けば、あ?と言う敵。
『まぁ、お互い動けないならいいや。とりあえず、私の足止めは成功ってことで』
「生意気な奴め…!」
『いつか救けが来るだろうし、体力ももうないから、いいや』
そう思い、ふぅ…と息を漏らした時だった。
「舞!?」
『!!』
「うわっ、なんだこりゃ…地面が凍ってる…」
「!オイ!あいつ!」
勝己くんが見つめる先には、地面に張り付けられる敵の姿。
そして、轟くんの視線の先には、壁に張り付けられる私の姿。
「…舞がやったんか」
「す、すげえ……」
「おい!大丈夫か?!」
すぐに駆けつけてくれる轟くんに、笑って大丈夫だよ、と答えれば、一瞬ホッとするも、恐らく私の傷を見て眉を顰めた。
「……よく見りゃ、切り傷ばっかじゃねえか…」
『あっ…ああ!そうだ!服!ごめん!いっぱい破っちゃって…』
「ンなもんどうでもいい。とにかく、怪我しすぎだ」
そう言ってデコピンをする轟くんに、素直にごめん…と言えば、本当に心から反省してんなら許す。と、なんとも刺さる言い方をされた。
「お、オイ轟、嘉風救けるっつってもどうすんだコレ?俺の硬化でも壊れねえぞ?」
「爆破する」
「それ嘉風共吹き飛んじまうだろ!」
『!そうだ!粘土!アイツの個性は多分粘土なの!だから、もしかしたら熱で溶けるかも…!』
そう言うと、轟くんは左手を当て、じんわり熱を送る。
すると、どろっと溶けだした。
「…ちょっと熱いかもしれねえ。悪ィ」
『ううん、大丈夫だよ』
轟くんの炎熱でとりあえず救出してもらい、先程の敵の元へと近づく。
『…完全に動きは止めておかないと…』
「俺の氷結で止めるか?」
「爆破で気絶させちまえばいいだろ」
「いや!爆豪!」
結局轟くんの氷結で全身凍らせ、身動きを取れないようにしてから、急いで上へと向かう。
『…ねえ、これだけ暴れてるんだし、もう建物突き破っても大丈夫じゃない?』
「…確かに」
「まじで言ってんのか!?」
「それが手っ取り早ぇな」
『警備システムに影響ない程度にするから…!とりあえず、こっちきて』
3人に近づくように言い、風を起こす。
『んじゃ、とりあえず…150階くらいまで目指して、行くよ?』
「アホか、最上階まで目指せ」
「いや、せめて190階だろ。最上階まで行ったら警備システムが…」
「うっせ!わーっとるわ!」
『あー、もうほら行くよ!』
ぶわっ!と思い切り風を起こし、天井を突き破って私達は上へと目指した。