2人の英雄

□第2話
2ページ/2ページ



『だいぶ見て回ったねえ…後は何が残ってたっけ…』

「"ヴィラン・アタック"……」


ぽつりと轟くんの口から零れたアトラクションの名前。

…あぁ、まだ行ってないやつ。タイム競う感じのやつなのかな?


『よし、じゃあそこも行こう!』


と、ここでこの選択をしたが為に、私の最悪の状況が生まれてしまったのだ。


『あ、轟くん、あっちで受付みたい』

「わかった」


2人で受付し、どっちが早いか勝負だね。なんて呑気に話していれば、バァーン!と凄まじい音がなり、始まったのがわかった。

順番を待っていれば、"クリアタイム33秒!第8位です!"とMCが聞こえてきた。


『(33秒で第8位かぁ…)』

「……お、1位になったら景品あるみてえだぞ」


壁に貼ってあるポスターに、第1位の景品"商品券1万円分"と書かれていた。


『1万!?ひゃ〜…獲れたらいいね……』

「いけるだろ」

『わぁ…じゃあ轟くんに期待してる……』


謎の自信に満ち溢れている轟くんにそう言えば、3位まででも景品あるってよ、と指を指す彼。


『2位が"お食事券5千円分"で、3位が"エキスポ限定お菓子の詰め合わせ3千円分"……』

「(目が……)」

『(どっちにしろ節約になる…!)』


なんて、節約魂に(ちょこっと)火がついた私も気合いを入れ直し、出番を待っていた。

少しすれば、次、轟焦凍さんと嘉風舞さん!と、スタッフさんに呼ばれた。

順番が先の轟くんが出ていくと、ひゃー!すごい!すごい!すごーい!!とMCが聞こえた為、出番口から顔を覗かせると、巨大な氷の塊が岩山を覆っていた。

ダーっと出ていって正面から見てみれば、それはもう体育祭と同じくらいのアレで…。


「じゅ、14秒!現在トップに躍り出ました!!」

『うひゃあ…すごいな轟くん…!』

「いや、そうでも……!」


ボンボン!と爆破の音が聞こえたと思えば、てめえこの半分野郎!と聞き覚えのある声がした。


「爆豪」

『えっ、勝己くん!?来てたの!?』

「アア!?なンだクソ女も来てたのか!?

つかてめえ!いきなり出てきて俺すげーアピールか、コラ!」

「緑谷たちも来てんのか」

「無視すんな!」

『エッ、う、わ…!』


轟くんの視線の先を見てみれば、緑谷くんをはじめ、飯田くんや切島くん、お茶子ちゃん、それに響香や百までも居た。


『(あッ……終わった………)』

「あーーー!!!!舞ちゃんやん!!!」

「やっぱ轟と来てたんだ」

「まあ!」


おーい!と手を振る女子3人に苦笑いで手を振り返していれば、MCの女性の人に次の方ですよね?と声を掛けられる。


『そうです!』

「はい!では次の方!じゃんじゃんいきましょう!ヴィラン・アタック!レディゴー!」

『はぁっ!!!』


巨大な竜巻を起こし、ある程度の高さの敵を壊して、残りの上の方にある敵は竜巻の風に乗って、凝固で直接潰しにいった。


『どーだ!』

「15秒!2位が2人並びました!」

「アアン!?なんで俺とてめえが同じタイムなんだァ!?」

『負けたぁ…』

「まぁどっちも景品貰えんだし、いいだろ」

「俺を無視すんなクソが!!」


と、もう1回だ!と暴れだした勝己くんを皆でなんとか止め、景品だけ貰ってからアトラクションの出口へと向かった。


『お菓子の詰め合わせ…!』

「よかったな。商品券もいるか?」

『いや!それは冬美さんに持って帰ってあげなよ。それかエキスポのお土産買って帰るとか!』


そう言えば、それいいな。と使い道はお土産に決まったみたいだ。


「おーい!」

「舞ー!」

『あ、お茶子ちゃん!響香!百!』

「出会えたじゃん。さ、紹介してくれるんだよね?」

『うッ…やめてよ響香ぁ!』


と、言えば、まさか轟さんとご一緒だったとは…とニコニコとする百に、そうだね。とニヤニヤするお茶子ちゃん。


「はじめから言ってくださればよかったのに…」

「うんうん」

「なんで隠すの?」

『だって…』

「?」


全く話のついていけてない轟くんは、どういうことだ?と百に尋ねていた。


「あぁ、舞ったら嘘をついてたんですのよ」

「嘘?」

『う、嘘じゃないもん!』

「じゃあ轟は地元の友達なワケ?」

『い、いや…む、昔一緒に遊んでたし…』

「まぁ…半分嘘で半分本当というところでしょうか?」

『ソウデス……』


ごめん…と素直に謝れば、そういうことじゃないんよ!とお茶子ちゃんが宥めてくれた。


「ま、轟なら安心だわ。舞のことよろしく」

「あぁ」

「轟さん達はレセプションパーティーには参加されるのですか?」

「レセプション……あぁ、夜の…参加するぞ」

『(あ、それで正装か、なるほど……)』

「ならその時だね!」

「お互い楽しも」


と、3人に手を振り、完全に見えなくなったのを確認してから、チラリと轟くんを見る。


「…嘘……」

『うっ…いや…轟くんと2人って言ったらまた皆色々言うだろうから黙ってたんだけど……』


結局バレた…と、言えば、まぁ遅かれ早かれ何れバレてただろ。と少し笑った轟くん。

…まぁ、確かに……。

なんて、自分でも納得してしまった。


『…あ、そういえば次どこに行くの?』

「あぁ、親父の代理と顔出さねえといけねえ場所があって…面倒だったら先に部屋戻ってていいぞ」

『ううん。今日は轟くんの同伴者だし一緒に行くよ』

「悪ィな」


どこ行くの?と尋ねれば、ここ。と言われたのは、恐らく建物の名前。

…なんか、すごいお偉いさんが居そうな…。

なんて思いつつ、轟くんと地図を見ながら目的の場所へと向かって行った。


「……嘘ついてたんだな…」

『ちょっと、まだ言うの!?ごめんってば…。

ん?ちょっと待って、そう言えば、轟くんもさっき嘘ついたって言ってたよね?アレは?』

「………アレは別に舞に嘘は言ってねえ」

『え、どういうこと?』

「…店員に嘘ついちまっただけだ」

『?何を嘘つくことが…』

「彼女なら1杯サービスしてやるって言われたから」

『ぶっ!』

「半分嘘で半分本当だろ」

『いやそれは完全な嘘です!!』


次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ