僕のヒーローアカデミア

□第6話
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「参加種目も決まったし、楽しみだなあ!」

「うんうん!」

「あと2週間か〜」

「トレーニングしねぇとやべえな」

「嘉風もトレーニングとかすんの?」

『そりゃあするよ〜!勝ちたいもん』


天才が何言ってんだ〜と峰田くんに言われるが私も、何言ってんの〜と言い返す。


『天才なんかじゃないからね、私』

「どこがだよ!派手で強え個性持ってるって時点で才能あんじゃねーか!!」

『まあ…それは否定しない』

「いや、そこは謙遜しとけよ」


と、話に区切りがついたところで、久しぶりに皆で帰ろうとした時、


『ぐえっ』

「えっ、あの、爆豪さん!」

「今から皆で帰るんだけど」

「うるせえ」

『ちょっ…かつきくっ…くるしい……』


パッと首元を離されたかと思えば、腕を掴まれそのまま歩き出す。


『ちょっ!もう!なに?!』

「ババアが連れて来いってうるせえんだよ」

『え?!光己さんが!?』

「ちょちょちょーい!」


帰ろうとしていた爆豪くんを引き止めたのは上鳴くん。

あからさまに機嫌が悪くなる勝己くんに、上鳴くんが言った。


「お前ら付き合ってんの?」

「『は?』」

「確かに。私も気になってたわ」

「舞ちゃん、爆豪のこと"勝己くん"って呼んでるしね!」

『いやっ、全然そんなんじゃないよ』

「誰がこんなクソ女と」

『はぁぁ??こっちこそアンタみたいな人格ポンコツ人間なんて願い下げですゥ〜』

「死ね」

『うっさい。早く家帰るよ』

「待て待て、既に会話がおかしい。家に帰るって、どっちの家だよ!?」

『勝己くん家』

「おい、行くぞクソ女」

『あっ、ちょっと!

ごめん!じゃあまた明日ね!』


教室から出る時にチラッとだけ見えた轟くんの顔。

どこか、少し寂しそうな、そんな感じがした。


『(もう1回話しておかないといけないかなぁ…)』

「…オイ、テメェ聞いてんのか?」

『えっ?あ、ごめん、何?』


聞いとけや!と頭を叩かれ、ごめんってば!と言えば、ババアから、とケータイを渡された。


『は、はい?』

"あっ、舞ちゃん?今日の夕食なんだけど、お肉と魚どっちがいい?"

『いやあ、もうそんな…光己さんにご馳走して頂けるならなんでも構いません!!』

"やだもう〜!じゃあお肉にするわね!"

『はーい!楽しみにしてます!』


そう言って電話を切り、ケータイを返せば、片手で頬をむぎゅっと掴まれた。


『ほんほははひ?!(今度は何?!)』

「…ブスだな」

『……』


無言でスネに蹴りを食らわせば、声にならない声を上げる勝己くん。ざまあみろ、と言わんばかりに見下ろしてから先に歩き出すと、待てゴラァ!と追いかけてきた。


「あら、アンタ達何、そんなに息切らしてどうしたの?」

『はぁ…はぁ…なんでも…ありません…!』

「はぁ…クソが…!普通の…女じゃねえ…!」

「追いかけっこでもしてたの?」


と、光己さんに笑われながら、勝己くんの家にお邪魔する。

…割と久しぶりな感じがするなぁ…緊張…。


「荷物適当に置いときな、ご飯出来たらまた呼ぶから!」

『あ、いえ!お手伝いしますよ!この間のおかずのお礼も兼ねて…』

「おかず?」

『タッパーいっぱいにおかず作ってくれたのを勝己くんにもらったんですけ…むぐ!』

「黙れクソが」

『んん!?』


口を抑えられたまま引き摺られるように勝己くんの部屋に連行された。


『もう!せっかくお礼しようとしたのに!』

「んなのしなくていいんだよ」

『もーー。…あ、てかさ、ずっと思ってたんだけど勝己くんの罵倒ボキャブラリー少ないよね。クソと死ねと殺すしかないじゃん』

「歯ァ食いしばれ」

『冗談』


今にも殴りかかりそうな勝己くんを鎮め、ベッドに凭れながら床に座り込む。


『…変わんないねえ、勝己くんの部屋』

「そうすぐに変わるかよブス」

『私の部屋だいぶ変えたよ?中学卒業した時に結構断捨離したんだからな?今度家来る?』

「…テメェは誰彼構わず、家に野郎上げんのかよ」

『はあ?むぐっ!』


また頬を掴まれ上を向かされる。


「この間、半分野郎と何話してたんだクソ」

『………』


いつもより鋭い目。見透かされてそうなその瞳に、抵抗しようにもできなくなってしまった。

勝己くんは知らない。私の過去も、轟くんのことも。

家に1人で暮らしてるのは知ってるけど、それ以外のことは、何も知らない。


『……』

「だんまりかよ、ブス」

『はふひふんはふはんへふはは(勝己くんが掴んでるから)』


そう言うと、頬を離して隣に座った彼。


「…ちっとは俺も見れやブス」

『何言って……いい゛っ!』


気がつけば、首元を噛みつかれてて、つんつん頭が鼻をくすぐって、何だか甘い匂いもして、なにがなんだかわからなくなった。


『っ!ちょっと…!何!?』

「うるせー黙れ死ね」

『最低かよ』


なんてやり取りをしてると、ガチャ…と音がし、2人で扉の方を見た。


「や、やばい勝さん!気づかれちゃった!」

「でもいいの見れたね」

「まあ確かに…」

「……!!?」


隣の勝己くんがあまりに間抜けな顔をしていて、ぷっと吹き出せばまた睨まれる。

…まじ百面相だわ勝己くん。


「あっ、ご飯呼びに来たんだった。勝己!舞ちゃん!ご飯出来たよ!」

「うっせーわクソババア!」

『今行きます!』


ご飯の時の勝己くんはずっと機嫌が悪くて、でもひたすら話しかける光己さんと勝さん、という光景がおかしくてずっと笑っていた。

…と、同時に、私にはこんな風に過ごせる家族が居ないんだと、改めて思い知った。


『あ、光己さん、洗い物お手伝いします!』

「お、じゃあお願いしようかな。勝己ー!風呂入ってきな!」

「わかってら」


勝己くんがリビングから出ていくと、光己さんが大丈夫?と尋ねてきた。


「首元」

『あ、あぁ…突然過ぎてびっくりしましたけど、平気ですよ』


噛み跡付いちゃったけど、と笑えば、ちゃんと隠さないと明日えらいことになるねぇ。と笑われた。


「勝己も大胆になったもんだわ」

『勝己くん皆に対してもこんな感じですよ?』

「そうじゃなくって。おかず?だっけ?アレ私は何もしてないよ」

『…え?』

「仕事から帰って珍しくなんか作ったんだなぁと思ってたら、まさか舞ちゃんに持って行ってたとは…」

『…えっ?!じゃあアレ勝己くんの手作り…』


…まじか、何だあのハイスペック…めちゃくちゃ美味かったし、多分私より美味かった…。


「…舞ちゃんも大概鈍感だねぇ」

『割と鋭い方だと思ってるんですけど…』

「アハハっ!まぁいずれわかるよ!

あ、そうだ、ケーキあるんだけど食べる?」

『食べます!!』


勝己くんがお風呂から上がってきて、皆でケーキを食べた後、送ってやりな!と光己さんに言われた勝己くんに家まで送ってもらうことに。


『春なのにちょっと寒いね』

「別に」

『愛想ないなぁ、ほんと』

「オラ、とっとと歩け」

『ハイハイ』


無言のままマンションまで着き、じゃあね、と言おうとするとマンションの中へと入ってく勝己くん。


『えっ、ちょっ、どこまで…』

「アァ?テメェん家だ」

『いや、別にそんな扉のとこまで…って聞いてる?』

「行くぞ」


結局扉の前まで送ってもらってしまった。


『わざわざありがとう、勝己くん』

「ちゃんと戸締りしとけよクソが」

『お母さんみたいだね。あ、光己さんと勝さんにもよろしく』

「……」

『お休み、勝己くん』


何も言わないまま去る勝己くん。らしいなぁ、なんて思いながら家の中に入ってから気がつき、ベランダまで走る。


『勝己くん!!!!』

「!?」

『タッパー!!また返す!!』

「……」

『美味しかったよ!!ありがとう!!』

「はよ寝ろやクソ!」


下手な照れ隠しだなぁ、なんて思いながら彼が角を曲がるのを見送ってから中へと入った。


『…あ、噛み跡どうしよう』


まあ絆創膏でなんとかなるか、と軽い気持ちで行った翌日、あんなにも面倒なことになるとは思ってもなかった。

勝己くん恨みたいとこだったけど、彼もまた色々質問攻めされてたので許そう。
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