僕のヒーローアカデミア

□第5話
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「「オールマイト!!!」」

『オール…マイト……?』


彼は入口から一蹴りでこちらへやってくると、相澤先生を担ぎ、一瞬で私達4人を敵から離した。


「皆、入口へ。相澤くんを頼んだ、意識がない。嘉風少女も酷い怪我だ。早く!!」

『オール…マイト……私…』

「よく頑張った、嘉風少女…」

『うん……』


…ハッキリとはしないが、まだ意識はある…片足でなんとか立てれば、入口まで風で…全員運べるかな…。


『つゆちゃ…ちょっと…』

「大丈夫なの舞ちゃん」

「あ、足がやべえよ嘉風ェ!」

『肩…貸して…いっきに…入口まで……風で…』


緑谷くんも、と思うが彼は振り返り、オールマイトを見つめる。


「おい!緑谷!行くぞ!」

『み、どり…や…くん…?』

「蛙ス…っ…ユちゃん!」

「頑張ってくれてるのね。なあに緑谷ちゃん?」

「相澤先生も担げる…?」

「うん…けど何で…」

『ったく……みどりや…!』

「?!」

『あんま…けが、しないでよ…』

「…うん!」


彼が飛び出した瞬間に、ふわっ…と、風を起こす。


『ごめ……ちから、かげん…出来ない…から…着地は…まかせ…るよ…』

「ええ、大丈夫よ」

「おう!」

『じゃ…いくよ……』


入口までの風力を…!フルスロットル…で…!

と、飛ぼうとした時、感じた"いやなやつ"


『つゆちゃん…みねたくん…ごめん…』

「?嘉風?…うわぁあああ!!!」

「舞ちゃん!?」

『ごめん…!なんとか、して…!!』


3人だけ飛ばした瞬間に掴まれた腕。


「捕まえた」

『…死柄木…!』

「(しまった…!)嘉風…少女…!!」

「!!嘉風さん!!」

「おい…抵抗するなよ。残り1本…この指が触れればお前は崩れる」

『…ハッ…もう…ていこう、する…きりょくさえ…ないわ…』

「そりゃよかった」


死柄木は私を抱え上げるとモヤの奴や、怪物に向かって歩き出す。


『(絶対…足でまといだ…今…なんとか…しなきゃ…)』

「だから、抵抗はするなって言っただろ。殺したくはねえんだ」

『(考えろ……考え続けろ……)』


…とにかく、他の皆にこれ以上被害を出さないためには…。


「どっけ邪魔だ!!

デク!!!!」

『!』


その声に、薄れていた意識がハッキリとする。

…何で、ここに居るんだ。なんで…なんで……


「嘉風を…離せェ!!」

『!?きりしまっ、くん…っ!!』


ふわっと、宙に身体が浮いたと思えば、今度は切島くんに抱えられた。


「無事か!嘉風!」

『なんでっ…3人…!』

「嘉風」

『とどろきくん…』

「後は任せろ」

『ーーっ!』


うん、と力強く頷けば、切島くんがゆっくりと私を下ろし、前に立った。

…なるべくこれ以上足は引っ張らないように…そして、


『(サポートを…!)』

「出入口を押さえられた…こりゃあ…ピンチだなあ…」

「このウッカリヤローめ!やっぱ思った通りだ!」


勝己くんがモヤの仕組みを暴き、そして抵抗しないように、"怪しい動きをした"と俺が判断したらすぐ爆破する!!と脅しを掛けた。

…ヒーロー志望の言うことじゃないな。

なんて思えば切島くんがツッコミを入れてくれてた。

退路を断ち切られた奴らはどう出てくるか…と様子を伺えば、怪物は氷から無理矢理逃れ、身体を治しながら勝己くんに向かって走る。


『かつきく……!!勝己くん!?』

「うるせえなんだ」

「かっちゃん!よ、避けたの!?すごい…」

「違えよ黙れカス」


土煙の先にはオールマイト。左腕には酷い傷、そして一瞬見えた吐血。


「加減を知らんのか…」

「仲間を救ける為さ、仕方ないだろ?さっきだってホラそこの…あー…地味な奴。あいつが思い切り俺に殴りかかろうとしたぜ?

他が為に振るう暴力は美談になるんだ。そうだろ?ヒーロー?」


確かに、筋の通った話ではあるとは思うが、それを正義と呼ぶにはあまりに歪んだモノであり、あまりにも悪意が含まれていた。


「3対5だ」

『3対6の間違いでしょ』

「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた…!」

「とんでもねえ奴らだが、俺らでオールマイトのサポートすりゃ…撃退できる!」

「ダメだ!!嘉風少女を連れて逃げなさい!!」


なんてやり取りをしていれば、死柄木がこちらに向かってくる。


「おいきてる!やるっきゃねえって!」

「嘉風!下手に動くなよ!」

『動けないからご安心を!』


迎撃をしようかと5人で構えた瞬間、全員が感じた身体を突き抜けるような殺気。

その殺気を放ったオールマイトは、怪物と真正面から100%の力で殴り合う。


『すごい風が…!』

「向こうもこっちに来れねえ」

「オールマイト…すげえ…!」

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!!敵よ、こんな言葉を知っているか!?

Plus ultra!!


オールマイトが最後、怪物の鳩尾に一発入れると天井を突き抜けて吹っ飛んで行った。


「コミックかよ…。ショック吸収をないことにしちまった……究極の脳筋だぜ…」

「デタラメな力だ…再生も間に合わねえ程のラッシュってことか……」

『…これが……トップヒーロー……』

「さすがだ…俺達の出る幕じゃねえみたいだな……」

「緑谷!ここは退いた方がもういいぜ!却って人質とかにされてもやべえし…」

「クソ女みてえに」

『勝己くん失礼すぎる!!…いててっ…』


気が緩み一気に来る足の痛み。

…そう言えば折られたんだっけか…。


『(思い出したら痛くなってきた…最悪…!)』

「嘉風、大丈夫…じゃなさそうだな」

「うおっ、嘉風!足!やべえ!」

『わかってる!いたた…!(ダメだ…今になってまた意識が朦朧と…)』


肩を借りて歩こうと、傍に居た轟くんの肩を掴めば、彼はあろう事か膝の裏に腕を通し、私を横抱きにした。

…まて、待て待て、これ、俗に言う…


『(お姫様抱っこなのでは…)』

「くっ…轟羨ましい…!行くぞ!」

『ま、待って轟くん!あの、担いで!この運ばれ方はちょっと…!』

「担ぐ、って」

『俵みたく担いでくれたら…』

「……」

『?轟くん?』

「行くぞ」

『無視!?』


とりあえず他の奴らの手助けしながら、合流しようと歩き出す私達。

でもただ一人、緑谷くんだけはオールマイトを見つめていた。


「緑谷」

『(彼は…何であんなにもオールマイトを心配するの…?あんなにも強い、ましてやトップヒーローなのに…)』


…何をそんなに、怯えているのか。

そう思っていると、一瞬で目の前から居なくなった彼。

ふと先を見ればモヤに向かって殴りかかっていた。


『速っ…今一瞬で…!?(今の…オールマイト並の速さ……)』

「な…緑谷!?」

「オールマイトから離れろ!!」


そう叫び拳をつくる彼を、モヤを通して掴もうとする死柄木。


『緑谷くん!』


その時だった。何処からか射撃される死柄木。


「1-Aクラス委員長、飯田天哉!ただいま戻りました!!」

『飯田くん…!!』


…やっぱり、外へ応援を呼びに行ってくれてたのか…!

飯田くんと共に現れたのはプロヒーロー…基、先生達。

先生達が追い討ちをかけるように攻撃を続ければ、モヤと共に消えた死柄木弔。

破れた天井からは、柔らかい陽の光が差し込んできた。


『(あぁ……終わったんだ……)』
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