僕のヒーローアカデミア
□第5話
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『相澤先生!!!!』
戦闘態勢を取る彼の服を引っ張り、引き止めるようにしがみつけば、離せ。と諭すように言われた。
『先生!!!!ダメ!!!』
「…アイツらが見てる。"関わり"があるようなマネはやめろ」
『…っ!だって…もし…先生まで…』
「考えすぎだ。とにかく、お前は特に、常に誰かの傍に居ろ。いいな」
『…っ!!』
ゆっくりとその手を離せば、百や響香に大丈夫?と声を掛けられた。
『わ、たしは…大丈夫……でも…先生が…!』
「相澤先生なら大丈夫です。とにかく君たちはかたまりになっててください」
「待てよ!マジで敵なのかよ!?だとしたらバカじゃねえのか!?ヒーローの学校に乗り込んで来るなんてアホすぎる!!」
「先生!侵入者用センサーは!」
「もちろんありますが…!」
「現れたのはここだけか学校全体か…何にせよセンサーが反応しねぇなら、向こうにそういうことができる"個性"がいるってことだな」
冷静に分析する轟くんに、私も冷静を取り戻す。
『そうだ……学校から離れたこの訓練場、そこに入る私達……』
「あぁ…バカだがアホじゃねえ。これは何らかの目的があって、用意周到に画策された奇襲だ」
『(そうだ…奴らが…"奴"が考えもなしに来るわけがない…!!)』
「13号避難開始!学校に電話試せ!センサーの対策も頭にある敵だ。電波系の"個性"が妨害している可能性もある。
上鳴、お前も個性で連絡試せ」
「っス!」
「先生は!?1人で闘うんですか!?」
緑谷くんが今度は相澤先生を止める。
「イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ!正面戦闘は……」
「一芸だけじゃヒーローは務まらん。
13号!任せたぞ」
そう言って飛び出した先生の背中はすぐに遠く、小さくなっていく。
広場へ降りると一斉に攻撃が先生に向くも、個性を使って翻弄していく先生。
「すごい…!多対一こそ先生の得意分野だったんだ…!」
『(相澤先生……)』
「分析している場合じゃない!早く避難を!」
「嘉風!行くぞ!」
『うん……』
飯田くんや轟くんに行くぞ、と言われ全員で避難しようと動き出した時、出入り口に現れたのはモヤのような男。
「させませんよ」
「「!!」」
「初めまして。我々は敵連合…僭越ながら…この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、
平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思っておりまして。それと…こちらのクラスの"ある生徒"と少しお話しをしようかと…」
『ビクッ)…っ』
足が、動かない。
…慣れてるのに、敵との遭遇なんて、慣れてる、慣れてる…!
『(なのに…!)』
「本来ならばこちらにオールマイトがいらっしゃるハズ…ですが、何か変更があったのでしょうか?
まぁ…それとは関係なく…私の役目はこれ」
と、モヤが何かをしようとした時、飛び出す2つの影。
『!!勝己くん!!切島くん!!待って!!!』
2人はモヤに向かって攻撃を放つと再び戦闘態勢を取る。
「俺たちにやられることは考えてなかったか?!」
「危ない危ない……そう…生徒と言えど優秀な金の卵」
「ダメだ!どきなさい2人とも!」
「約1名、例外は居ますが…散らして、嬲り殺す」
『!!』
…ダメだ、なんとか、撹乱して…皆への意識を逸らして…なんとか…なんとかしなきゃ…!
黒く覆われるモヤから1人抜け出そうとすれば、パシッ!と掴まれた手。
『っ!?』
「嘉風!!!!」
グイッ!と引き寄せられ、轟くんに力強く抱きしめられたまま、私達はどこかへ飛ばされた。
そしてモヤから放り出された私達が着いたのは、
『はぁ…っ、ここ…土砂災害の…?』
「ちょっとじっとしてろ」
『えっ?わっ!?キャッ!?なに?!』
轟くんに抱き上げられた瞬間。目の前に氷が張られ敵達の身体は氷漬けにされる。
「子供1人に情けねえな。しっかりしろよ、大人だろ?」
『すご……じゃなくて!凍らすなら言って!?私一応浮けるから!(5秒だけ)』
「悪い、話す暇がなさそうだったからな」
そっと下ろされると、私の手は掴んだまま動けない敵に近づいてく轟くん。
「散らして殺す…か。言っちゃ悪いがあんたらどう見ても"個性を持て余した輩"以上には見受けられねぇよ」
『…確かに、私達で"抑えられるレベル"だとしたらチンピラにしか思えないね』
「こんのガキ共…!!」
「…待て、あの女…死柄木弔が言ってた女じゃ……」
『…死柄木…弔…?』
「おい、嘉風。あんま喋んな」
私を一歩後ろに行くように手を引くと、彼は至極冷静に言葉を紡いでく。
「このままじゃあんたらじわじわと身体が壊死していくわけなんだが…俺もヒーロー志望。そんな酷えことはなるべく避けたい。
あのオールマイトを殺れるっつう根拠…策って何だ?」
――――――
『コレって情報はなかったね。やっぱただお金で釣られた輩だったのかも』
「あぁ、でも、やっぱ中心の奴らがオールマイトを殺る役目らしいな」
さっき居た敵達は一旦轟くんの炎で助けた後、瞬時に私の個性を駆使して全員気絶させておいた。
そして広場へ向かって走りながら轟くんと状況の整理をする。
『だったら…早く行かなきゃ…!!』
「…待て、嘉風は一旦誰かと合流しろ」
『っ!』
「…何で、って聞かねえってことは、自覚してんだろ」
ギュッと痛いくらい強く私の手を握る轟くんは次々に私の核心を付いてきて、何も言い返せない。
…でも、違うんだよ、轟くん。
『…違うの、轟くん』
「…」
『もう、何も出来ないまま…誰かが傷つくのなんて…私が許せないの』
ましてや、一度私を救ってくれたヒーローが、今たった1人で敵を相手にしてるんだ。彼だろうとさすがに無事な訳がない、きっと多少なりとも傷は負ってる。
『だから…私は行くよ、轟くん』
「!」
一瞬、緩まった手。するりとその手から離れ拳をつくる。
…ありがとう、必死に止めようとしてくれて。
『先に行ってるから!』
「!おい!嘉風!!」
風圧で一気に広場まで降り立つと、モヤの奴がそこに居た。
…アイツがここに居るってことは…出入り口を防ぐ必要がなくなった…ってこと?
13号先生が飛ばされたのかはわかんないけど、飛ばされる瞬間、飯田くんと瀬呂くんが何人かをモヤから救けてたのは見えた。ってことは、あの場に居た全員が動けない程の深傷を負ったか、若しくは誰かが既に外へ出たのか…。
『(後者であって欲しいもんだな…!!)』
上手く着地をし、息を整えながら奴らと対峙する。
「まさか、君からわざわざ来てくれるなんて…
1年ぶりか?嘉風舞…!」
『悪いけど、貴方達と"お話し"しに来たわけじゃないの』
戦闘態勢を取れば、嘉風…と弱々しい声が聞こえた。
『!!!相澤先生!!』
「おっと、行かせるわけないだろ、黒霧」
『!!』
「先に彼女を"保護"させて頂きましょう」
「逃げろ…!」
『ッ!なめんじゃ、ないっての!!!』
モヤの服のような方へ氷の矢を放てば、動きが止まった奴。
『(やっぱり…!実体は無いわけじゃなかった!!)』
「何してんだよ黒霧!!」
声を荒げる目の前の男…死柄木弔に戦闘態勢を取れば、チッ…と舌打ちした後、帰ろっか。と呟いた奴。
奴を見ながらゆっくりと相澤先生の方へ近づいていけば、死柄木は一瞬で私の横を通り過ぎ、水辺の方へと向かった。
そして、その先にいたのは…。
『!緑谷くん!梅雨ちゃん!峰田くん!!』
奴の手が梅雨ちゃんの顔に触れた。だが、何も起こらない。
「本っ当、カッコいいぜイレイザーヘッド」
『!せんせっ!』
「手っ…放せえ!」
『緑谷くん!!無茶だ!!』
「…脳無」
緑谷くんが死柄木に殴りかかったかと思えば、先程まで私の後ろに居た怪物が彼らの前に立っていた。
『(速すぎ…!何アイツ…!)』
とりあえず、一瞬で相澤先生の怪我を…!そう思い、先生の元へ駆け寄って、いけば今度は標的を緑谷くんにした怪物。
一瞬先生に触れ、軽い傷は治してすぐ、戦闘態勢を取る。
『くそっ…!そう好きにさせて、たまるもんですか!!』
風で移動し、緑谷くんの目の前に立ちはだかれば動きが止まった怪物。
『!』
「な、んで…?」
「チッ…まぁいい…」
再び梅雨ちゃんに手を伸ばした死柄木弔の手に向け氷を放った瞬間、ガシッと掴まれた腕。
『えっ?きゃっ!?』
「脳無…程々にしろよ」
『なに、を…!?』
怪物は腕を掴んだまま、私を地面に叩きつけた。
『かはっ…!』
「……」
『クソっ……!』
鎌鼬を起こしたり、氷で攻撃するも一行にダメージを受けない怪物は、腕を掴み私の足を踏みつける。
『!!!!あ゛ぁあああ゛!!!』
「嘉風さん!!」
『み、どり…や…く…来ちゃ……ダメだ…!!』
緑谷くんに逃げろ、と伝えるも彼は再び拳に力を込め、こちらに立ち向かって来ようとする。
『み、ど…りや…くん…!!』
「待ってて…今、救けるから!!!」
『やめ……』
と、次の瞬間。
バアァアン!!!!
『…あ……!』
「もう大丈夫…
私がきた!!!」