2人の英雄
□第7話
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「きゃあ!」
『!!お茶子ちゃん!』
倒しても減らない警備マシンに苦戦していれば、お茶子ちゃんの悲鳴が上がり、すぐ様救け出した。
「!!舞ちゃん!!後ろ!!」
『っ!』
ギリギリのところで氷結が現れ、すぐに轟くんが近づいてきた。
「おい、油断すんな」
『ご、ごめん…ありがとう…!』
「くっそ!キリがねえ!」
防御に徹するしかできなくなってきた私たちは、段々と隅へと追いやられる。
「このままだとやべえぞ!」
「クソが…!」
5人で相手をしたとは言え、疲弊しきってる私たちは、最早ただ後退するしかなかった。
…後ろはもうない…。
「チッ…」
『さて…どうしようか……』
「めんっどくせぇ…!!」
ジリ…と靴が擦れる音がした時、何故かピタリと止まった警備マシン。
「!?なんだ…」
「止まった……?」
『!もしかして…!!』
"I・アイランドの警備システムは通常モードになりました。I・アイランドの警備システムは通常モードになりました"
そのアナウンスが流れ、よかったぁぁ…とペタリと座り込むお茶子ちゃん。
『緑谷くんとメリッサさんがやってくれたんだ…!』
「助かったぜ…」
「あぁ、本当に…」
チラリと後ろを見る轟くんに、私も後ろを見れば、ゾッとするような高さだった。
「危ねぇとこだった」
「チッ…遅せぇんだよクソナード…」
『!そうだ…とりあえず皆と合流して緑谷くんとメリッサさんの所に行かなきゃ…
恐らく、まだ敵は残ってる…』
「そうだな。ここで飯田達待つか?」
『うん…下手に動いて敵に見つかっても面倒だし…。とりあえず、連絡してみる』
響香に電話を掛けてみれば、すぐに出てくれ、とりあえず上に上がってきているそうだ。
『もう少ししたら着くと思うって!』
「…にしてもだいぶ時間を食うな。200階までエレベーターとか使えねえかな…」
『それはメリッサさんが無理って言ってたから諦めよう。もう1回私の個性で上まで飛ぶのが早い』
「お前もう体力あんまねぇだろ、無茶すんな」
そう言って私の肩を掴んだ轟くんの顔は険しいものだった。
『…けど、いちいち階段使ってたら、それこそ時間が勿体ない!私一人の戦力がなくなるくらい、平気でしょ?それに、途中で切れるより、せめて皆を上に運んだ方が状況的にも合理的だと思う』
「そういうことじゃねえだろ。今は相手の力量がわかんねえ以上、より多く戦力を残す方が最善だって話だ」
『それは皆の実力なら大丈夫でしょ?』
「ちょ…お前ら一旦落ち着けよ!」
切島くんがそう言うも、チッ、と、あからさまに不機嫌そうに舌打ちをした轟くんに、思わずビクリと反応すれば、わかった。とぽつりと言った。
「俺が氷で上まで運ぶ」
『!ちょっと!』
皆にそう言った轟くんを止めようとすれば、グイッと近づく顔。
「俺がぶっ倒れたら、舞が治せばいい。その方が合理的だろ」
『……』
「"体力があるなら"、個性使って1人でも力を残しておくべきだ」
『…っ!』
反論出来ずにいれば、皆!!と現れたのは飯田くん達だった。
「飯田、無事だったか」
「ああ、皆満身創痍だが……」
『!!百!響香!』
響香に肩を抱かれながら歩く百。すぐさま2人に駆け寄り、大丈夫!?と声を掛ける。
「舞!ご無事で何よりですわ…」
『そんな…!私なんかよりも百や響香が…』
「何言ってんの!あんたもよく見たら傷だらけじゃん!!」
じゃあお互い様だね。と眉を下げ笑って言えば、直接傷つけられてんのは舞だよ。と、響香が伏し目がちに言った。
「もう…あんまり心配かけさせいで…」
『…ごめんね』
「…とりあえず全員集まったな。俺が行けるとこまで氷で運ぶ、そっからは階段で上まで上がるぞ」
「ああ、頼んだ轟くん」
『!轟くん!!』
バッ!と振り返り動こうとした時、ふらつく足元。
よろけた身体はバランスを崩し、地面との距離が段々近づく。
『(や、ばい……)』
と、思った瞬間、腕を引いて支えてくれたのは勝己くんだった。
「何やってんだテメェ」
『勝己くん……』
「自分の限界もわかんねぇのかよクソ女」
『ごめん…ありがとう』
「おら、行くぞ」
勝己くんに腕を引かれたまま、皆で轟くんの周囲へと集まり、上へと上がっていく。
限界まで来た所で途中で壁を破壊し、中へと入れば敵があちこちで倒れていた。
「緑谷か…」
『結構な数だよ…大丈夫かな、緑谷くん』
走りながらとにかく上へと向かっていれば、ドオォン!ドォン!!と大きな音が聞こえてくる。
『やばそうだよ!』
「ああ、急ごう!」
体力も気力も限界の中、私たちはひたすら上を目指し階段を上り続けた。