2人の英雄

□第5話
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会場の見える吹き抜けが見え、急いで駆けつけてみれば、オールマイトを含む会場内の人が何故か縛られていた。


『何かあったんだ…』

「どうする?」

『(あれが敵…恐らく5人くらいか…)

…とりあえず、響香。イヤホンジャックを地面に刺して。敵に気づかれないように、オールマイトから話を聞かなきゃ。ここ、任すよ。角で誰も来ないか見張ってる』

「わかった」


2人から少し離れ、周りの様子を伺う。

…人の気配はなさそうだな…。でも敵は会場にいる5人だけじゃないはず…。

プロヒーローの多く集まるあの会場内を抑えて、一体何をするつもりなのか。とりあえず、このタワーはあいつらに占拠されてるわけで…。


『(恐らく、警備システムを弄ったのも奴らだ…なら、まずこの厄介な警備システムを解除しに行かなくちゃ…)』

「舞!」


手招きをされ、3人で急いでその場を離れ、皆の元へと戻る。


『ん、わかった。大体そんな感じなんだね…。敵の数とかは?』

「何も…多分、オールマイトはとにかく逃げろって…」


でも…とどこか悔しそうな響香に、他に何かあるの?と尋ねれば、顔を歪めた。


「オールマイトの声と…他にも…多分、一般人の声も聞こえた…すごく不安そうだった…」

『……』

「ウチらじゃ、どうにも出来ないのかな…!」

「耳郎さん…」

『…とにかく、皆と合流しよう。今後の動きはそれから決めなきゃ』


ぽん、と響香の肩を叩けば、コクリ、と彼女は頷いた。


――――――


「敵がタワーを占拠して、警備システムを掌握してる。この島の人達が全員人質に取られたんだ。他のヒーロー達も捕らわれてるから、すぐにここから逃げろって…」


オールマイトは言ってた。と、言伝を伝えた響香は不安そうな顔になっていた。

すると、他の皆は口を閉じる。

…確かに、まさかそんな事態になってるなんて、誰も思わないし。


『(…どうすれば……)』

「オールマイトからのメッセージは受け取った。俺は、雄英校教師であるオールマイトの言葉に従い、ここから脱出することを提案する」


飯田くんがそう言えば、百もその意見に賛同した。

すると、上鳴くんが何か思いついたように顔を上げる。


「なら、脱出して外にいるヒーローに…」

「脱出は困難だと思う。ここは敵犯罪者を収容するタルタロスと同じレベルの防災設計で建てられているから」


メリッサさんのその言葉に、じゃあ救けが来るまで大人しく待つしか…と、そう言った上鳴くんに、響香が声を上げた。


「上鳴、それでいいわけ?」

「どういう意味だよ」

「救けに行こうとか思わないの?」

『…響香……』


苛立ちを見せる響香はグッと拳を握る。


「おいおい、オールマイトまで敵に捕まってんだぞ!オイラたちだけで救けに行くなんて無理すぎだっての!」

「でも…!」


その時、黙っていた轟くんが言葉を紡いだ。


「俺らはヒーローを目指してる…」

「ですから、私たちはまだヒーロー活動を…」

「だからって…何もしないでいいのか?」

「それは…」

『私も、そう思う…。事態をわかっていて、動けるのは私たちしか居ないんだ。それを、見過ごせっていうのは、違う気がする』


さすがの百も、私や轟くんのその言い分に言葉を詰まらせていた。


「…救けたい」


緑谷くんのその言葉に、皆の視線が彼へと集まった。


「救けに行きたい」

「敵と戦う気か!?USJでコリてないのかよ、緑谷!」

「違うよ峰田くん。僕は考えてるんだ。敵と闘わずに、オールマイトたちを、みんなを救ける方法を……」


現実的ではない提案に、上鳴くんは、そんな都合のいいこと…と漏らすも、緑谷くんは続ける。


「それでも探したいんだ。今の僕達にできる最善の方法を探してみて、みんなを救けに行きたい」

「デクくん…」

「I・アイランドの警備システムは、このタワーの最上階にあるわ」

『!』


そう言ったメリッサさんの顔は、どこか不安気で、緊張した面持ちだった。


「敵がシステムを掌握しているなら、敵の監視を逃れ、最上階まで行くことが出来れば……みんなを救けられるかもしれない」

「メリッサさん…」

「監視を逃れるって、どうやって?」

「現時点で私たちに実害はないわ。敵は警備システムの扱いに慣れてないと思う」

『…それで、敵との戦闘を避けて、システムを元に戻す……』

「それならイケんじゃね?」

「だよね!」


さっきまで神妙な表情だった上鳴くんや響香が、少しだけ顔を明るくさせ、そう言った。


「…しかし最上階には敵が待ち構えてますわ……」

『…それは…「戦う必要はないんだ」


そう説く緑谷くんに、思わず息を呑んだ。


「システムを元に戻せば、人質やオールマイト達が解放される。そうなれば状況は一気に逆転するはず…」

『……』

「デクくん、行こう!」


お茶子ちゃんがそう言って、バッと立ち上がれば、他のみんなも緑谷くんに賛同していった。


『…凄いね、緑谷くん』

「えっ?」

『ずっと、思ってたけど、改めて凄いや』

「ええっ!?」


そう話していれば、飯田くんが少し厳しい顔で言った。


「これ以上、無理だと判断したら引き返す。その条件が飲めるなら、俺も行こう」

「飯田くん!」

「そういうことであれば、私も」

「よっしゃ、俺も!」

『!百…上鳴くんも…!』


と、そこまでいけば、峰田くんも半泣きのまま、行けばいいんだろ、行けば!!と叫んだ。

ありがとう。と緑谷くんは皆に言うと、メリッサさんに近づいた。


「メリッサさんはここで待っていて下さい」

「私も行くわ」


すぐにそう返したメリッサさんに、緑谷くんは不安そうに眉を寄せた。


「で、でも、メリッサさんには個性が……」

「この中に警備システムの設定変更が出来る人いる…?」

「あ……」


…そうだ、すっかり忘れていた。確かに、戦闘を回避出来たとして、結局警備システムが元に戻せなければ、話は進まない。


「私はアカデミーの学生、役に立てると思う」

「でも…」

『分かりました』

「「!!」」

「嘉風さん!?」

『メリッサさんも、みんなを救けたい気持ちは一緒だよ。それに、システムに関しては私たちだけじゃどうにも出来ない…

結局、最上階に行くまでに、戦闘は回避して行くって話になってるんだし、一緒に行く方が得策だと思う』

「嘉風さん…!」

『舞で大丈夫です。もし、何かあっても…私たちで必ずお守りします…!』


ね?と皆に向かって言えば、頷いてくれた。


「!…ありがとう!」


じゃあ、早速行かなくちゃ。と立ち上がれば、緑谷くんが、オールマイトにもう一回会っておきたい。と言ったので、とりあえず別れ道まで全員で向かい、彼を待った。


『…システム云々の話もしてたけど…1つずっと引っかかってる』

「なんだ?」

『パッとしか見れてないけど、会場内に勝己くんと切島くんの姿がなかった』

「!本当か?!」

『多分だけど…。だから、もしかしたらまだここに来てなくて、外に居る可能性もあるし…或いは……』

「…このタワー内のどこかに居る…?」


轟くんの言葉に、うん。と頷けば、なら、早く2人とも合流しなければ…。と飯田くんが言った。


『……約1名…何も起こしてないといいんだけど…』

「……どうだろうな」

『…はぁぁ……』


…まぁ、特に大きな音も聞こえないし、大丈夫だと信じたい。

それと……。


『(2人とも、ちゃんと無事で……!)』


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