2人の英雄
□第1話
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「悪ィな、付き合わせちまって」
『ううん、大丈夫だよ』
"I・エキスポ"へ行くため、必要なものを買いに轟くんと街へ出かけていた。
「舞は買い物ねェのか?」
『あー、うん、この間A組の女子皆で買い物行っちゃった』
「そうか…ますます悪ィな…」
『いや!いいよ別に!普段1人だから誰かと過ごすのは嫌いじゃない』
そう言えば、ぎゅっと握られる手。
「…なんか…デートみたいで嬉しいんだ」
『……』
「俺は、舞だけが特別で、舞が好きだ」
『ボボボ)〜〜ッッ!!』
「舞?どうかしたか?」
『な、なんでもない……(くそぉ…今思い出すなよ、私…!!)』
握られた手を解くこともなく、素直に受け入れれば、少し口角を上げ歩き出した轟くん。
暫くウインドーショッピングをしていれば、あれ?と女性の声がした。
「焦凍?こんなところで何して…って…!!」
「姉さん…」
「舞ちゃん!?え!?」
『あ、こ、こんにちは…!お久しぶり…です…!』
「えっ…私のこと覚えてる!?」
『冬美さん…ですよね?』
えーー!!やだ!嬉しい!と私の手を取りぶんぶんと振る轟くんのお姉さん…基、冬美さん。
「えっ、もう〜相変わらず可愛い〜!焦凍から話はよく聞くのよ!ほんと、昔よりも可愛くなったし大きくなったねえ!」
『ありがとうございます…!』
「…姉さん、こんなところで何してんだ?」
「何って買い物よ。焦凍こそ何して……!!」
と、そこで何かを勝手に察された気がした。
「……もしかしてデートだった?」
「あぁ…『違います!!』
そう食い気味に否定すれば、ちょっとムッとする轟くん。
あっ、いや、そのっ、えと…と言葉選びを考えていれば、"まだ"なのね、とクスクス笑う冬美さん。
「焦凍、舞ちゃんにはすごい甘えてるんじゃない?昔からよく追いかけてたし…」
「昔の話はいいだろ」
『はは…。普段クールな感じなんで、たまに頼って貰えると、なんか心を許されてるなぁと思って、私的には嬉しいですよ』
そう言うと、ほんとそういうとこ!と何故かテンションが更に上がってる冬美さん。
「そうだ!"I・エキスポ"!!舞ちゃん、一緒に行ってくれるのよね?」
『はい!あの、本当にいいんですか?私なんかが…』
「いいのよ、舞ちゃんになら焦凍のこと任せられるし」
『いや、そんな!』
と、そんな話をしていれば、轟くんが、もういいだろ。と手を引く。
「あ!焦凍!夜ご飯は?要るの?」
「……いや…」
『…ウチで食べてく?』
「おお」
「いつもごめんね、舞ちゃん!今度はウチにおいで!」
『はい!』
「親父の居ねぇ時にな」
『はは…』
…なるほどね。今日は帰ってるんだエンデヴァーさん……。
相変わらずの仲だなぁ、なんて思いつつ、では、と冬美さんと別れた。
「かっこ悪ぃな、俺」
『え?』
「舞と居ると、どうしても甘えちまう」
『ふふっ、私は平気だけどね。素が見れるのは嬉しい』
笑ってそう言えば、やっぱ、姉ちゃんだな。とふっと笑う轟くん。
『?』
「俺は末っ子だから、余計に甘えちまうのかも」
『ああ…でも、確かに…轟くんには母性本能ちょっと擽られるかも…』
「…それ、なんか、あんま喜べねえよ」
『ごめんごめん。…で、今日は何が食べたいですか、轟くん?』
「…蕎麦」
『って言うと思ってた』
買い物、付き合ってくれる?と聞けば、当たり前だろ。と返事が返ってきた。