2人の英雄

□第1話
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「一緒に来てくれ」

『…はい?』


ピンポーン♪と珍しくインターホンが鳴り、誰かと思えば、モニターに映ったのは轟くんだった。

アポなしで来るなんて珍しいなと思いつつ、扉を開ければ、開口一番に出てきたのはその言葉だった。


『え?ちょ、なに?どこに?』

「近くまで来てたから丁度いいと思って」

『いや、あの、話が読めない…』

「コレ」


ピラリ、と見せられたのは招待状。

よく見ればエンデヴァー宛のもので、中身を見てみれば、有名な人口移動都市"I・アイランド"で開催中の"I・エキスポ"への招待状だった。

…あ、これ話せば長くなりそうなやつかな。


『…とりあえず、入る?』

「あぁ、悪ィな」


中に入ってもらい、麦茶を2つ、グラスに注いでテーブルのイスへと座った。


『で、詳細は…??』

「それ、オヤジの代理で行くことになった。同伴者もいいらしいから、姉さんが舞誘って行ってきたら、って」

『(何故私…)…普通、同伴者って家族じゃないの?』

「姉さんも兄さんも予定があって行けねえから。

2人で旅行がてらどうだ?って言われた」

『(お姉さんッッ…!!)』


ダメか?と、眉を下げ、尋ねる轟くんの顔を見れば、勝てるはずもなく…。


『…い、いいよ…』

「!本当か!急なのに、ありがとうな」


目を一層輝かせ、パァっと嬉しそうな顔になった轟くんを可愛いなぁ、なんて思いつつ、頭の片隅では、クラスの皆への対応をひたすら考えていた。

…もう、これはまた弄られるパターンだな……。


「…俺、旅行とかあんま行ったことねえから、楽しみだ」

『……そか』


…全力で轟くん楽しませよう。

そう心に誓ってしまえる程、彼の薄らと浮かべた笑みの破壊力は凄かった。


「…おい、何笑ってんだ?」

『んーん…轟くん、可愛いなあって』

「男に可愛いは違ぇだろ」

『さっきの顔は"焦凍くん"だったから』

「…それ、もう1回」

『え、やだよ、恥ずかしい』


――――――


「えーー!!!ヤオモモすご!!」

「いえ、父からお譲り頂いたものですから…」

「で、行けるのはたった2人…」

「ここは……」

「公平にジャンケンだね!」

「よっしゃー!」


と、盛り上がる中、はい…と静かに挙手をすれば、どうしたの?と視線が集まる。


『私、別で行くから、5人でジャンケンしてくれていいよ』

「えっ?!舞も招待状もらったの?!」

「クラッシャー?」

『いや、クラッシャーは知らないけど…とりあえず私の分は大丈夫だから』

「…へぇ…誰と行くの?」

『えッ…と…友達!招待状貰ったらしいんだけど、余ってるらしくて…』

「ふーん…地元?」

『あ、うん、まぁ、そんなとこ』


…へぇ…と響香は何となくニヤニヤした顔だが、他のみんなは信じてくれてるっぽいしOK、大丈夫。

いや、でも友達(轟くん)は間違いではない。地元…というか昔の友達(轟くん)にしておけば、嘘にはならないよね、うん。ならないならない。


「じゃあ舞抜きでジャンケンってことで」

「「おおー!!」」

「いくよー!

うーらみっこなしよ、ジャンケンポン!!」


うああ!!と三奈ちゃんの悲鳴が上がり、梅雨ちゃんと透ちゃんも残念…と落ち込んでいた。

結局、女子でプレオープンに参加するのは、私、百、響香、お茶子ちゃんの4人になった。


「舞、島での行動はそのお友達とですわよね?」

『あー…そうだね、多分』

「…じゃあさ、島で会ったら紹介してよ、舞の友達」

『へっ!?あ、会えたらね!島結構広いみたいだし』


なんてその場しのぎで誤魔化した私は、当日後悔することになる。


「とりあえず皆で買い物行こ!旅行の服買お!」

「「さんせーーい!!」」
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