僕のヒーローアカデミア

□第5話
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轟くんに横抱きにされたまま、入口へ向かい相澤先生を探してもらう。


『!いた!相澤先生!!』

「うお!?何だ!?」

「君もすごい怪我じゃないか!すぐに救急車が来る、待ってなさい」

『違うの!あの…!』


事情を説明しようにも、どうしたものかと思っていると、校長先生がやって来た。


「やあ!君のことは知っているよ、嘉風さん!」


ちょっとこっちにおいで!と呼ばれ、そのまま轟くんに運ばれる。


「運んでもらって悪いんだけど、君、ちょっと外してくれるかな?」

「あ、はい…」

『!大丈夫です!あの、彼は、大丈夫です…』


上手く伝えられない、でも、多分校長先生ならわかってくれるはず。

…いいんだ、散々濁してきたけど、轟くんになら、言ったっていい。


「……君が言うなら」

『ありがとうございます』


そうして、皆の死角になる場所へ案内されると、応急処置を施された相澤先生と13号先生の姿があった。

轟くんに近くに下ろしてもらい、まず相澤先生に触れる。

…治せるだけ、治さないと…!!

その一心で私は個性を発動した。すると、見た目の傷はほぼ綺麗になくなっていく。

次に13号先生にも触れれば、傷痕は残るもののほぼ完治させる。


「!(そうだ…よく、嘉風に怪我を治してもらってたのか…俺は……)」

「これは口外厳禁だよ」

「え?」

「彼女のこの個性はあまりに強力すぎる。敵が狙う理由もよくわかるよ」

「……はい」

『……校長先生、ありがとうございます。助かりました』

「僕は何もしていないよ!」

『13号先生は多分大丈夫です。相澤先生のこと、お願いしますね。外傷はほぼ治しておいたので、あとは内傷がどれだけ残ってるかわからないんですけど…

あと、同じクラスのこ、たちの…てあて………』


言葉の途中で歪む視界。

…あ、やばい……もう、限界来ちゃったのか…。

私はそこで意識を手放した。


* * *


舞を連れて校長先生とどこかへ行った轟さんが何故か1人で帰ってきていた。


「轟さん!」

「八百万…」

「舞は?!」

「さっき先生達と一緒に病院に運ばれた」

「嘉風、足えぐいことになってたしな…」

「うぷ…俺、思い出したら吐き気してきた…」

「…っ!」


切島さんや峰田さんのその言葉に、過ぎるのは彼女の顔。

…本当に大丈夫かしら、怪我の具合は?彼女は何と戦っていたの?

不安や疑問がたくさん押し寄せてきて、涙が出そうになる。


「(どうしましょう…彼女にもしものことがあったら……)」

「八百万、大丈夫?」

「舞ちゃんならきっと大丈夫だよ!」

「ええ。舞ちゃんは強いもの」

「皆さん……」


あまりに酷い顔だったのか、皆さんに励まされる始末。

…もっと…しっかりしなければ…!


「…ありがとうございます、皆さん」

「いーえ!」


そのような会話をしていると、刑事さんがやってきて、教室に戻るように、と言われた。

すると、蛙吹さんが、相澤先生は?と刑事さんに尋ねる。


「あぁ…彼らならさっき病院に運ばれて…。そろそろ着いたかな」


刑事さんはわざわざ病院へ電話を掛けると、ケータイをスピーカーにしてこちらへ向けた。


"両腕と顔面を怪我しただけで酷い外傷は見られない。幸い脳系の損傷もない。ただ…眼窩底骨に異常が見られまして…眼に何かしらの後遺症が残る可能性もあります"

「だそうだ…」

「あ、あの!一緒に運ばれたクラスメイトの女の子は…」

"あぁ、足が酷くやられていた彼女だね。こちらである程度手当てした後は、そちらのリカバリーガールの治癒で完治すると思います。腕の骨にも軽くひびがいっていたけど…怪我自体はそう酷くはないよ。今後の生活にも影響はないね"

「「よかったぁぁぁ……」」


皆さんが口を揃えて出たその言葉。本当によかった…。ホッと胸を撫で下ろし、13号先生やオールマイト、緑谷さんの容態も聞いてから、私達は教室へ戻ることとなった。


「ホントによかった、舞が無事で」

「ええ……」

「私らも充分奮闘してたんだし、舞も舞なりに頑張った証拠じゃん。気に病むことないよ」

「…そう、ですわね…!」


耳郎さんに言われ、少し元気を頂けた気がした。


* * *


『…リカバリーガール』

「何だい?」

『…何故、私だけ仮眠室で寝てるんでしょう?』

「保健室が重病者でいっぱいだからねぇ…」

『はぁ…』

「アンタはもう怪我ほぼ完治だよ。体力がないだろうけど」

『はい、お陰様で身体がめちゃくちゃだるいです』

「私の治癒と、アンタの治癒はまた違うんだよ」

『体力を使うって意味では同じです……』

「ほら、文句言ってないでとっとと教室戻りな!」


リカバリーガールに叩かれ、重だるい身体を起こして教室へ戻る。

扉を開けた瞬間、


「「嘉風ェ!!/舞ちゃん!!」」

『うおっ!?』

「お前怪我は?!大丈夫か!?」

「足は!?治ったの!?」

「腕も!!動くの!?」

「もう動いて平気なのかよ!?」


口々に喋りながら皆に寄られ、思わず身を引いた。

…聖徳太子か!私は!


『身体はもう平気!皆が気にする程でもないから!』

「ホントかよ…」

『うん!大丈夫大丈夫!』


自分の机まで戻ろうとすると、一瞬力が抜け身体が傾く。


『あ』


バッ!と突如伸びてきた腕。その先を見れば、伸ばした主は勝己くんだった。


「クソが」

『あ、ありがとう、勝己くん…

でも、その…胸、当たってて…恥ずかしい……』

「?!?」

「「爆豪ォオオオ!!!!!」」

「こんのクソ女ァ!!!」

『ちょ!は!?なんで!?つか、爆破させんなセクハラ野郎!!!!』


ギャーギャーと騒いでいると、プレゼントマイク先生がやってきて、早く帰ろ!!と怒られた。


「はあ…とんだ1日でしたわ…」

「確かに」

『ねー。まさか、雄英の敷地内で敵に襲われるとは思ってなかったなー』


3人で帰りながらそんな話をする。

…本当に、とんだ1日だった。


『(久々だった…あんな、純粋な恐怖と憎悪…)』


自分を見失ってしまいそうで、


「まあ明日は休みらしいし、ゆっくり過ごそう」

「そうですわね」


目の前のモノ全部が壊れてしまいそうで、

ただ、恐ろしかった。


「舞?」

「大丈夫ですか?やはり、まだ具合が悪いのでは…」


2人の心配する声色に、不謹慎ながらもどこか喜んでる私が居て、本当に最低だと思う。

でも、やっぱり、嬉しくて…――。


『…大丈夫だよ!ありがとう、2人とも』

「そう?あんま無理しないでよ」

「お家までお送りします!!」

『いや!それはホント悪いよ!!2人も危ないし…ホント平気だから!』

「何かあったらすぐ連絡するんだよ」

「いつでも駆けつけますから」


そういう2人に、ふふっと笑えば、どうしました?と首を傾げる。


『いやー、2人は私のヒーローだなあって』

「「!!」」

『ありがとう!』


夕日か、はたまた本当に照れてくれたのか、2人の頬は赤く染まっていて、それにまた笑ってしまった。
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