ONE PIECE

□第7話
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ドゴォオオオン!!!

と、激しい音と共に地鳴りがした。


「なんだよい、これ…!」


甲板に出れば街も軽くパニックを起こしているらしく、人が右往左往している。


「くそっ…!」


イゾウも何事か、と甲板へと出てきた。


「何が起こってる…?」

「わからねェ…だが……」


なんだ、この嫌な気配……。

禍々しい何かが、この地鳴りを起こしているのには違いない。


「(に、しても…!この殺気は…!!)」


ビリビリと身体中に伝わる殺気には、心当たりがあった。それは俺だけじゃなく、イゾウもだった。


「……頼むぞ、マルコ」

「わかってるよい!」


悪魔の実の力で空を飛ぼうと、姿を変えた時。


「マルコ、気ィつけろ」

「!!オヤジ!!」

「この感じ………」


顔を歪ませるオヤジに、ただ事でないのがわかった。


「…確信はなかったが、恐らくリリーだろう……

油断するな。お前まで巻き込まれるぞ」

「!!…あァ…わかったよい…!」


急いで煙の上がる街外れの場所へ向かい、少し離れた場所に降りた。

…何処だ…何処にいる…?

建物に身を隠して徐々に進んでいけば、煙も徐々に晴れてき、薄らだが姿が見えた。


「リリー………!?」

「ゔっ…だ……すげ……!」

「!!!」


頭から血を流し、もう既に意識も朦朧としてるであろう海軍の頭を掴む、真っ白な手――。

明らかに彼女よりも大きな相手であろうソイツが浮いている。


「(なん、だ……コレ……!!)」

「だず………!」

『シネ』


ドスッ…

と、鈍い音の後、ボタボタと零れ落ちる男の血。だらり、と腕も落ち、完全に…逝ったのであろう。

非道にまで思えるその行為に、何故、と疑問しか残らない。

…何で…どうして"あの"彼女が…。


「(いや…本来の姿………なのか…?)」


ザッ…と、足音を立て彼女に存在を認識させる。

ピクリ、と肩を揺らした彼女が振り返った瞬間に煙が一瞬にして晴れた。


「……お前…」

『………』

「……リリー……だよな…?」


黒い刺青のような何かが、彼女の頬あたりまで覆い、背中には黒い羽が生えていた。

そして、その彼女の目には………光がなかった。


「…おい……リリー『……レダ……』え……?」

『ダ…レダ………』

「……っ!」


ただ歴然と言ったリリー。

…完全に…違う人間だ。あれは…リリーじゃない…リリーなんかじゃ……!


「お前こそ…誰だよい……!」

『ワタ…シ………ハ……!!



ゔぁあぁあ!!!』

「!!!リリー!!?」

『あぁあぁああああ!!!!』


頭を抑え悲痛な叫び声を上げる彼女。


『あぁあぁああ…アァアアァア!!!』

「!!!」


ブワッと急に風が舞い上がり、吹き飛ばされる。


「ゲホッ!な、んだ…?!」

『ハァッ!ハァッ!あぁあァァァ……!!!!』

「くそっ……しっかりしろよい…!リリー!!!!」


ギュッ、とキツく抱きしめば振り払おうと身体を動かすが、それを上回る力で抱きしめる。


「おい!しっかりしろいリリー!!俺だよい!!マルコだ!!!!」

『うぅうあぁ……ぁ…ま……るこ………』

「あァ…白ひげ海賊団1番隊の…お前の家族の…マルコだよい……」


リリーは弱々しく俺を押し返すと、じっと目を捉えた。光のなかった瞳は、徐々にその光を取り戻す。

頬まで伸びていた黒い刺青は背中に引きずり込まれるように引いていった。


「(……今のは…)」

『……ま、るこ…さん………』

「リリー……!」


ガクガクと震え、ぎゅっと強く俺の服を掴むと、顔を真っ青にして血に塗れた海軍の姿を見た彼女。


『わ……わた…』

「見るな」


頭を胸に押し付け、ただそう言った。


「ありゃ…お前の所為じゃねぇよい………」

『あ……ぁ………』

「…帰ろう、リリー」

『…!!…は、い…?』

「!!!」


カクン、と力の抜けたリリーを受け止めれば、彼女の温もりを感じる。

…確かに、温かい。


「……なァ、リリー…さっきのは……」


『シネ』


「………リリー…」


深い眠りについたのであろう彼女を横抱きにし、俺はモビーへと戻った。
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