恐怖映画

□新年あけまして風物死
1ページ/1ページ


大晦日という事で家で1人まったりと新年を過ごすのも悪くないなと思い、
国際チャンネルで日本の番組をつけて芸人さんが笑うとハリセンで叩かれてるを見ながらお雑煮を作っていると笑い声がするものだからリビングに駆け込むとあら不思議。
笑い声の主は夢魔のフレディ・クルーガーさんで、その隣でブギーマンのマイケル・マイヤーズさんが座っている。
リビングの周りでクマのぬいぐるみを抱きながらうろちょろするジェイソン・ボーヒーズさん(殺人鬼とは思えないね)が押しかけていた。

私は誘った覚えないのに、いつ部屋に入り込んだのだろう。もう殺人鬼なんてやめてスパイになっちゃえばいいと思う。

「よぉ。新年独り身なんざ可哀想だと思って来てやったぜ」
「(あっ、なまえ会いたかったよ〜!)」
「(お邪魔してます)」
『呼んだ覚えないです。』
「寂しいじゃねぇか。折角の新年祝おうぜ」
「(シャンパンも持ってきたよ。)」
「(なまえ、ごめんね…めいわくだった?)」

ジェイソンがマスクの奥の目をうるうるとしながら見つめてくるのが可愛いのなんのって、
断る理由もなく(あの瞳でみられて断れるほど私の心は氷河みたいに冷たくない)あっけなく承諾してしまったのだ。

「なんかいい匂いするな。いま何作ってんだ?」
『お雑煮を作ってます。』
「(オゾウニ?)」
「(なまえの母国の食べもの?)」

『日本にいる親戚が食べ物を届けてくれたんです。食べますか?』
もしかすると、もしかするんだけど、3人が目をキラキラさせてるから訪ねてみたら即答で食べると言われた。多めに作っておいて良かった。



『出来ました。お代わりもありますよ。』
「(わぁい!おいしそう!ありがとうなまえ)」
「(食べてみたかったんだ。ありかとうなまえ)」
「おぉサンキュ。これはなんだ?」
『ライスケーキ、餅というやつです。』

モチは1人2個入れて渡すと3人とも喜んでくれてこっちまで嬉しくなるから、押しかけたことなんてもう気にしない。
マイケルさんが台所に来て「ねずみの肉使う?」なんて言ってきたので丁重にお断りした。

あ、そうだ。


『ちなみに、モチは喉に詰まりやすく毎年これを食べて窒息死する人が最も多い風物死。
海外では"新年の静かなる殺し屋"と呼ばれてます。
殺人鬼の皆さんもよく噛んで殺されないようにしましょう。』

「なぁ、なんで俺たちに渡したんだよ。」
『語呂がいいかなと思いまして。』
「(うう、こわいなぁ…)」
「(ごくり…)」

その後、3人の凶悪な殺人鬼が背中を並べて真剣な面持ちでモチを黙々と噛んでいるのを見て笑いをこらえるのに必死でした。


次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ