恐怖映画
□バレンタイン ∇フレディ
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「俺の悪夢へようこそなまえ!」
『今晩は。何だか機嫌いいねフレディさん』
今晩夢の中で会うもんだから、初めこそ律儀に使っていた決めゼリフも忘れてたのに、
今夜のフレディさんは機嫌がいいらしくミュージカルの司会者よろしく登場。可愛いと思ったのは内緒。
「なまえちゃんよぉ〜、今日は何の日かな?ん?」
『2月14日ですね。』
「そうだな〜。で?」
『え?』
「2月14日といえば?」
『あ〜…』
本当は分かってる。でもいつも意地悪されるし、普通に渡すのもつまらないから普段の仕返しと言ったらなんだけど少しのいたずらでわざと分からないふりをしてみる。
するといつものフレディさんとは別人のように焦り始めた。
「あ〜って何だ!日本では女から…!
そりゃあないだろなまえよ!俺がどれだけこの日をっ…!それでもうら若きティーンエイジャーか!乙女か!」
『この間精神年齢診断で37歳でした。』
初めの有頂天な笑みが嘘のように落胆している。よほどショックだったのだろう、なんだか申し訳なくなったので彼の項垂れた頭にかぶってある中折れ帽子を取る。
じとりと不機嫌な丸いオリーブの瞳と目が合う。
いつもより深く刻まれている皺と拗ねる彼が可愛いくてたまらなくそのこめかみにキスをする。
『嘘ですよ。ちゃんとチョコありますから。意地悪しちゃいたくなっちゃいました。』
わざわざ日本の文化調べてまで楽しみにしてくれたんですね、嬉しい大好きですフレディさん。ってチョコを手渡しておでこにキスを落とすと、
「いつからこんな悪い子になったんだよ」って私の顔全体キスの嵐が降りた。
『ね、フレディさんは?』
アメリカじゃ逆でしょ?サプライズ好きのフレディさんが私の分を用意しないことは無いもの。
そしたら「もちろん、俺はイベントが大好きなんだ」って指を鳴らすと空からチョコとバラが降ってくる。
それは一見素敵な風景を想像するかもしれないけど、バラならまだいい、問題はチョコだった。
花びらより明らかに重力のある小粒チョコがドバドバ頭上に落ちる。地味に痛い。
『痛い痛いっやめてください!フレディさん!フレディさんったら!』
抗議する私を見て、仕返しとばかりにケラケラ笑うフレディさんの憎たらしいったらもう!
でも好きなんですよ。
【『痘痕もえくぼってね…』
「あ?なんだそれ」】