ドラズ
□寄り道
1ページ/1ページ
寒い。
学校からロボットマンションまでの道を、ただひたすら無言で歩く。
寒すぎて、話す余裕なんてない。
一緒にいるのは、キッド。
いつもはいっぱい喋るキッドも、さすがに無言で、ポッケに手つっこんで、首を引っ込めて、ぶるぶる震えてる。
見てて面白い。
本来、学校とロボットマンション間は、生徒専用モノレールで繋がっているが、そのモノレールは僕たちドラえもんズがこの前壊したばかりで、直っていない。
こればかりは、みんな後悔している。
こんなときだけは、学校の敷地面積がだだっ広いことを呪うしかない。
ああ、なんで学校からロボットマンションまで徒歩で1時間かかるのか…。いくらなんでも遠すぎる。
朝、マンションから出たのが7時。いつもでるのは7時半なので、まあ早いほうだろう。
そう思っていたし、周りの生徒も同じくらいに出てきていた。
しかし。
学校に着いたのが8時半。みんな、時計を見て、一気に青ざめた。
もちろん僕も。
登校時刻は、8時までだから。
遅れてきた人数も相まってか、なんとか僕(やえもん、メッド)は怒られずに済んだ。
ただ、いつも通りにでていつも遅刻してるキッドとエルはもちろん大遅刻。
午前中ずっと廊下に立たされていた。
王ドラとドラリーニョは、いつも早いよ。
王はそういう性格だし、リーニョはサッカー部の朝練とかあるらしいからね。
そして、なんとか下校時間。
なんでか、不幸なことに、寒波が急に押し寄せて、すごく寒い。
「あ」
キッドが声をあげた。
「?」
「あそこ、購買の出店じゃね」
出てない首で左前方を指される。
そちらを向けば、明かりだ。
おでん、だって。
「よっしゃあ助かった…。おっちゃんおでんちょうだい」
「はいよ。1つ100円ね」
「げ。俺今金な…ニコフ、頼む」
まあそうだろうと、僕は渋々財布を取り出す。
どうせだから、みんなの分も買ってっちゃえ。
「大根、たまご、1つずつ、7人分」
「1400円だよ。はい、糸こんにゃくおまけ」
「ニコフお前太っ腹だなー。おっちゃん寒くねえの」
「おでんに囲まれてちゃ、寒いもんも暑くなるわ」
「へーいいな。お、サンキュ」
おじさんは、カップにつゆをいれ、具を詰めた。しっかり蓋をして袋に入れてくれたから、こぼれることはないだろう。
大根は半月型。よかった、僕が暴れることもない。
キッドがおでんの袋を受け取る。「先に食べちゃえ」なんて言って、手を袋につっこみながら歩き始める。
ああ、歩いてるうちに冷めることを考えてなかった。
まお、帰ってからチンすればいいかな…。
「キッド、ちょうだい」
「おっけー」
キッドがおでんを取り出すと、
「あ、糸こんにゃく、2人分しかねえぞ」
「どうするー?」キッドが僕に聞く。きっと、食いしん坊なキッドのことだ。食べたくてたまらないに決まってる。
僕も食べたい。
「じゃあ、2人で食べちゃおう。…秘密」
「お、いいな!いっただき!ほい、これニコフの分」
そういって渡してくれたおでんのカップには、大根とたまごと、糸こんにゃく。
寄り道して、買い食いして…なんだか青春してるなあ。
「おい!上みろニコフ!」
ばっと慌てて顔を上げる。
顔に、何か着いた。
なんだろう、目を開けてしっかり見る。
…うわぁ。
「雪だー!おぉー!よし、早く帰るぞ!」
「うん、いそごう」
キッドが走り出す。
走りながら食べたら危ないよっていいながら、僕も走り出す。
また、寄り道しようね。