結界師 長編
□決定
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「美希、アトラ」
「なぁに?」
「いつになれば、私は任務に行けるのだ。」
「そうね…いつまでもここで閉じ込めてるわけにもいかないものね…」
「美砂は戦闘をしてみたいの?」
「なんでもいい。」
「でも美砂なら戦闘よね。力の制御も出来るし、いいんじゃない?」
「頭領に交渉しておくから、あなたは訓練しなさい。」
「わかった。」
正直、日頃の訓練は退屈そのものだった。アトラの放つ妖獣を捕まえたり、翡葉と組手をしたり、模擬的な戦闘をしたり、うるさい奴らの訓練を傍観したり。
簡単な妖退治でもいいから何か新しい刺激を得たいと考え始めていた。
「頭領、そろそろ美砂も任務に行かせてもいいと思うのですが…」
「んー」
「簡単な妖退治でもいかがですか?」
「あ、いい案件がある。」
そう言って差し出された一枚の依頼書を見る。
「無道さんの所との連帯だ。先日無道さんに彼女を紹介しているし、これでいいだろう。」
「明日の夜からですね?」
「そ。俺も行くからお姉さん方も安心だろ?笑」
「可愛い妹分に何かあったら許しませんからね」
「はいはい」
「では、伝えておきますね」
失礼します、と一礼して部屋を出た刃鳥は軽やかな足取りで廊下を歩いた。
「と、言うわけだから。良かったわね、初任務」
「……わかった。すぐに支度を始める」
「今から準備を始めるなんて、随分と嬉しそうね」
「嬉しい…そうだな…嬉しい、だな。」
「(いい傾向ね)」
「妖退治の任務には、何が必要だ?」
「皆は各々、武器や応急処置用の薬箱とかを持っていってるわね。妖混じりの子は替えの服とか…」
「武器はないからな。服くらいか。」
「でも、あなたの場合元々の服の数が少なかったわよね?」
「支給された服を着まわしている」
「確か、支給された服は三、四着ずつだったわね…買い足しましょうか。」
「今の分で足りている」
「あなたの場合、私服も買った方がいいと思うわ。年頃の女の子だもの」
彼女は首をかしげた。
「あなたくらいの年齢の女の子はね、お洒落をするものなのよ。普段着は戦闘服ではなくて可愛らしい服を着たりするものよ。任務から帰ってきたら、みんなで街に行きましょう?いい勉強になるわ」
「わかった。」
「さ、支度をしてらっしゃい」
そう言うと彼女は先程の刃鳥のような軽やかな足取りで廊下を歩いた。
「……感情の成長は見られるわね…あとは表情ね。そっちの訓練もしてみようかしら?」
廊下を行く後ろ姿を見て呟いた。