結界師 長編
□はじめまして。
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(ここは…どこだ?)
畳と薬の匂いに気がつけば、そこは見知らぬ場所だった。
そこで自分は彼らに助けられたのだ、と悟る。
現在に至るまでの出来事を振り返っていると廊下側の障子が開いて、和装姿の男性が姿を見せた。
「やぁ、気分はどうだい?」
「…。」
「君に助けてもらったこと、礼を言うよ。」
「…。」
「で、どうして君はあんな夜更けに森の奥深くにいたのかな?」
「…。」
答えなどはしない。答える義務もない。
第一、誰だこいつは。どこだ、ここは。
疑問しかない。
「…答えてはくれないか…。君は俺達を助けた後にそのまま倒れちゃってね。
放ってもおけないから連れてきちゃった。
…裏会って知ってる?一般人とは違う、特殊な能力を持つ異能者の集団。ここは、その裏会のはみ出し者の集団、夜行。」
(はみ出し者の…はみ出し者、)
「俺、ここの頭領なんだ。こう見えても結構強いんだぞー!」
自称結構強い、という男は
にやりと笑った。なんだか嫌味な笑い方だ。
「ところで君、帰るところはあるのかい?親御さんは?」
不機嫌そうに首を横に降る。事実、帰る場所なんてものは、どこにもないのだから。
「ないのなら、ここで一緒に住まないか?まだ作ったばかりの集団でね。バタバタしてるんだけど君みたいな年の子もいるし、帰る場所がないのならここを帰る場所にすればいい。」
そう言って夜行の頭領はまた笑った。
今度は嫌味な笑いではなく、
穏やかな笑顔で
「どうだい?」
何かあれば、すぐに立ち去ればいい。
仲間なんて、いらない。
利用するだけすればいい。
「…いいだろう。」
「やっと喋ってくれたね!よし!とりあえず、食事を持ってくるよ。」
そう言って夜行の頭領は機嫌よく部屋を出ていった。
しばらくして部屋に戻ってきた彼の手には白い小さな箱が握られていた。