結界師 長編
□prologue
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出会い
「ここか…」
暗闇に佇む、和装の男。彼は半透明の四角い箱の上に立っている。
服には特徴的な紋様。
この男…間流結界師の使い手でありはみ出し者の集団“夜行”をまとめる頭領、墨村正守は現在任務遂行に追われていた。
「頭領、この森で間違いはなさそうですね」
凛とした雰囲気を漂わせる彼女は、夜行の若きNo.2、刃鳥美希。
「この森、何か不思議な力を感じますね」
「今回の依頼はこの森の調査だ。なんでも、何の力もなかった土地に急に妖が集まり出したらしい。」
「!頭領、あちらを見てください!」
刃鳥の指さす方向には無数の妖が蠢いていた。
「やるぞ、刃鳥。」
「はい」
刃鳥のサポートもあり結界術で次々と妖を退治していく。現れる妖を追いながら、二人は森の奥へと足を踏み入れた。
「刃鳥!後ろ!」
森の最深部付近に近づいた頃、不意に彼女の背後に大きな妖の尾が現れ彼女を刺そうとした。
瞬間、正守が彼女の前に立ち絶界で守りを固めた。が、一行に衝撃は来ない。
崩れ落ちてしまった妖と、正守たちの間には一人の幼き人間の姿があった。
焦げ茶色のローブを身に包んだ小柄なシルエットからは肌を直接刺激する邪気が放たれている。
「…失せろよ。」
幼き人間の予想以上に低く掠れた声に従い、他の妖たちは姿を消していった。
急な静けさがあたりを包み、正守はなんとも言えない不思議な状況に数秒呆気に取られたが、冷静さを取り戻すと口を開いた。
「助けてもらったこと、感謝する。
…がこんなところに子どもが立ち入っちゃだめだ…」
ふわり。控えめな風に目の前の小さな布が風に舞ったかと思うと、返事もなく
幼き人間はそのまま地面に倒れてしまった。
「おい!?おい!!」
駆け寄る二人。
バシャッと濡れた地面に倒れ込んだ彼女。
これが彼女と彼らの出会いであった。
身元もわからぬまま…いやしかしこのままではダメだと彼女を夜行に連れて帰る決心をした正守は彼女を担ぐためにローブを手に掬った。
よく見ると焦げ茶色のローブは血にまみれたローブであり、地面は赤い何かで染まっていた。