短編

□愛で冷まして
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「はぁっ!」

荒れた大地に響く声と共にドシャッという音が混じる。半分に裂かれたモンスターが気味の悪い動作を繰り返しやがて動かなくなると、わぁっという声が響いた。

「やったね、ルドガー!」
「結構強かった、ね・・・」
「あーあ、コイツの液体が服に飛び散ってやがる・・・」
「アルヴィン汚いです」
「アルヴィンきたなぁーい!」

エル、ジュード、アルヴィン、エリーゼ、ティポと、一緒に戦ったメンバーがそれぞれに会話をしているのをルドガーは両手剣をしまいながら聞いていた。
少し離れたみんなのところへ向かおうと振り向いた瞬間ぐらりと目の前が揺れ、数秒遅れで体に衝撃が走った。

「っ・・・」
「「「ルドガー!?」」」

沢山の足音が近づいてくるのが聞こえたが、目の前は靄がかかったように歪み、酷い頭痛と息苦しさ、吐き気がし始め意識が朦朧とする。
そして、ふわっと浮き上がる感覚があるが目の前は見にくく何が起こっているのか理解ができない。遠くのほうでジュードすごーい!力持ちー!という声を聴いたところでルドガーの意識は途絶えた。



カチャン――――という音でルドガーはゆっくりと目を開ける。
先に目に飛び込んできたのは白い天井だった。
ゆっくりと目線だけを動かし、辺りを見渡すと真っ白い白衣が目に飛び込んできた。

「・・・ジュー、ド?」

擦れ気味の声で目線の先にいる人物の名前を口にする。

「あ、ルドガー!よかった、目が覚めたんだね」

呼ばれたことに気付いたジュードは片手に布タオルを持って横たわっているベッドへと歩み寄り、持っているタオルをルドガーの額へと当てる。ひんやりとした心地よさが伝わってきて、深く息を吐きだす。

「俺、どうしたんだっけ」
「覚えてないの?ルドガー、ギガントモンスターを倒した直後に倒れたんだ。酷い熱が出てて、今だってまだ高いんだから」
「そういえばなんかちょっと熱い気がする・・・」

熱さの所為でまだ少し滲み出ている汗をジュードが拭き取ってくれる。
着ているシャツにはしっとりと汗が染みつき不快感を感じ、身じろぐとジュードが気付いたように着替えを持ってきてくれた。

「はいこれ、ルドガーの。汗で気持ち悪いでしょ?」
「ああ、ありがとう」

渡された着替えを受け取ると、しめったシャツを脱ぎ捨て綺麗に畳まれた部屋着に腕を通す。そこでふと自分が着ている服がいつものではないことに気付く。

「あれ、俺、こんな服、もってたっけ?」
「ああ、それ僕のだよ。少し小さいかもだけど」
「なんでジュードの?」
「だってここ、僕の研究室だから僕の服しかなくて・・・」
「そうだったんだ、いや、ありがとう。・・・ジュードの匂いがする」

くんくんと着たばかりの服を匂うと服に馴染んだジュードの匂いが香る。

「ちょ、恥ずかしいから匂いなんて嗅がないで!」
「ごめんごめん」

はははと笑うルドガーにジュードはもお、と頬を膨らませるが、すぐに笑みに変わる。
ベッドサイドへと腰かけたジュードは真剣な顔をしてルドガーの胸に額を押し付けた。

「心配したんだからね・・・ルドガー」

ぽそりと口にした言葉に、ルドガーはごめん、と呟きジュードの体を抱きしめた。
ジュードもそれに応えるように抱きしめ返す。

「ルドガー」
「ジュード・・・」

数秒見つめ合った後に、二人は引き寄せられるように口付けを交わす。
最初は浅く――そして深く――――。息継ぎする間もない程の深い口付けにルドガーの口からは飲み込みきれない唾液が顎を伝い落ちる。

「っ・・・んっ・・・」

やっと離れた口と口を銀の糸が引き途切れ、ルドガーは恥ずかしさで顔を覆うがジュードにそれを阻止され、掴まれた両手首は頭上へと引き上げられてしまう。

「駄目だよルドガー・・・可愛い顔、良く見せて」
「っ・・・ジュー、ド・・・俺、熱・・・」
「ごめん・・・でも、ルドガー可愛すぎだよ」

再び顔が近づいてきて交わされる口づけにルドガーは恥ずかしくも幸福を感じたのであった。

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