短編

□愛妻弁当
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【愛妻弁当】

ここは、ヘリオボーグ研究所のとある研究室ーーーー。
室内には明かりが点いており、その真ん中で資料を眺めながら眉間にしわを寄せ考え込んでいる姿が1つある。
彼の名前はジュード・マティス。源霊匣を研究する研究者である。

「ーーーージュード」

不意に聴こえた声に、顔を上げる。
顔を上げた先にはジュードの恋人であるルドガー・ウィル・クルスニクが包みを片手に呆れた顔をして立っていた。
銀色の髪に少し黒みがかった前髪が特徴的なルドガーは、呆れた顔をしていたが、直ぐに笑みを零した。

「ルドガー!いつからそこにいたの?」
「ジュードが眉間にしわを寄せて唸ってる所から、かな」

口に手を当てたルドガーは悪戯っぽく笑う。ジュードは見られていたことが恥ずかしくなり顔を赤らめている。
その間にルドガーはジュードがいるところまで移動し、はい、と包みを差し出した。

「弁当、忘れてっただろ」
「え?」

ジュードは急いで自分の鞄を漁り始め、いつも入れている包みが無いことに気づく。

「ごめんルドガー、ありがとう」
「うん」

にこっと笑うルドガー。
お弁当の包みを渡すと、ルドガーはそれじゃあ、と今来た道を引き返そうとした。
それをジュードは手を引いて引き留める。

「……もう、行っちゃうの?」
「あ、ああ、だってジュード、研究中だろ?邪魔したら悪いし…」
「邪魔じゃないから、もう少し居てよ」

引いた手に力が入る。ルドガーは逡巡した後、こくんと頷いた。
ジュードはやった!と喜びながら、先ほど手渡されたお弁当を手に取り、椅子に腰掛け、トントンとルドガーに隣に来る様に促す。
ルドガーは静かに腰掛ける。と同時にジュードは弁当の包みを開き始めた。
ぱか、という音とともに弁当の蓋が取られ、中身が露わになる。
そこには色とりどりのおかずが綺麗に並べられており、食べるのには惜しいぐらいである。

「ルドガーの作るお弁当って、凄く綺麗だよね。僕、食べるのが惜しいよ」
「あはは。そんな大したもんじゃないぞ」
「いやいや、本当だよ。いつもありがとう、ルドガー」
「そんな事ない。…まあでも、嬉しい、けどな…」

ぽつりと呟くルドガーの顔は赤く染まっており、ジュードの視線から逃れる様に目をそらす。ジュードはくすっと笑い弁当に手をつけた。
数刻経った後、両手を合わせたジュードがごちそうさまでした、と言う。弁当の中身は綺麗に食されており、欠片1つも残されていなかった。

「随分綺麗に食べてくれたんだな」
「そりゃ、ルドガーが作ってくれたお弁当だからね、少しも残したくないんだ」
「〜〜〜/// また、平気でそういうっ」
「だって本当のことだから」

弁当に蓋をし、包みを掛けると持ってきた時と変わらない状態にする。
包み終わった弁当箱を鞄に入れると、元の位置へと戻る。

「っはぁ〜お腹いっぱい。美味しかったぁ〜ごちそうさま、ルドガー」
「お粗末様でした」
「あー、またお弁当忘れちゃおうかなぁ」
「? なんでだ?」
「そしたら仕事中でもルドガーに会えるでしょ?」
「! またっそういうっ///」
「ルドガーは嫌? 僕とこうして会うの」
「っ! …ぃ、ぃやなわけ、ないだろ…」
「ルドガー!!」
「わっ!ちょ!」

がばっとルドガーを引き寄せ抱きしめるジュードに恥ずかしさと嬉しさを感じながら、抱き締め返したルドガーだった。


___END___


(……ジュードの匂いだ)

(……ルドガーの匂い…ヤバイかも…)
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