Dream

□第四話 性格
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『川が枯れてる。……どうなっている』


困惑顔のまま、ハクを見つめれば、ハクもまた同じ様に戸惑っていた。


広範囲ではないが、風牙の都は走って廻ってみたから解る。さっきの川は都全体に別れて、行き届いていた。彼処が枯れたということはつまり――――


『チッ。矢張な』


洗濯物をハクに押し付けた後、走って下流の方へ向かう。


上流が枯れているのだ。勿論下流の川は枯れていた。


――――風の部族は水を絶たれた。


私は一度目を瞑り、腕を組んで考える。


こんなことをして、一番得をするのは誰か。


先ず、風の部族の奴等は除外。自分が困るだろう。まあ尤も。自身がどうなっても良いと云う奴なら、有り得るが。


次に、スウォンが放った追っ手。そうなると、相手は空の部族か?いや、ジュド将軍、彼のような性格ならこんな陰湿な事はしない。


ならば、ケイシュク参謀の命か?……彼なら有り得そうだ。だが、少し甘い策のような気がする。可能性は棄てないでおこう。


取り敢えずの方面は、スウォンの命で追っ手を出した。という事で良いだろう。


『クソッ。解らん』


悪態を吐きながら、しゃがみ込み、近くに転がっていた枝を手にする。


頭だけで整理するのは、難しくて思考が纏まらない。


残るは地の部族と水の部族それから、火の部族。


地の部族のグンテ将軍。彼は勇猛果敢で堂々としている。正面からやって来そうだから除外しよう。


水の部族は誰だっけ。名が思い出せん。確かジュンギ将軍であっている気がする。けど自信無い。…………なんとなく。なんとなく。想像出来ない。最初から降伏するように、言ってきそうなものだ。一応、保留。


さて。火の部族か。カン・スジン。父上の玉座を狙っていたのだ。スウォンの玉座となった今、未だに狙っているのかは知らんが、怪しい事には代わり無い。権力が狙いとすれば、風の部族に損害を与え、スウォンに取り入ろうとするのは、別段不思議ではないな。ただ、少し引っかかるが、原因が分からない。


『候補はケイシュク参謀に、ジュンギ将軍。カン・スジン将軍か。多いな』


名前を書いて、グルグルと円で囲んでみる。


「サキさん!」

『うわっ!なっなんだ!いきなり!?』


肩を軽く叩かれて、驚いて声が上擦った。立っていたのはテウだった。


「サキさんってば、何度声掛けても気付かないんだもん。何かブツブツ言ってて怖いし」


頭の上で手を組んだテウさん。こいつはさっき何と言った!?


『声に出ていたのか!まさか、全部聞いていたのか?!今すぐ忘れろ!』


勢いに任せて立ち上がり、テウの胸ぐらを両手で掴む。


「ちょっ、待って。待って。待って。俺何も言ってないから。落ち着いて。はい、深呼吸」

『良いから答えろ!聞いてたのか、聞いてなかったのか、どっちなんだ!』

「いやー。その、聴こえちゃった?」

『なら、聴かなかったことにして、今すぐ忘れろ!』

「サキさん、苦しい」

『あっ、その……すまない』


慌てて手を放し、若干焦りながら謝罪した。そういえばヘンデはどうしたのだろう。彼は何時も一緒にいたと思ったのだが…………。


「ハク様が呼んでこいって」

『了解した。行こう』


書いていたものを、足で消して歩き出す。少し歩いたが、後ろからテウが付いて来る気配がない。


不信に思い、振り返る。


『なっ!』


あろうことか、テウは腹を抱えて大笑いしているのだ。


「サキさん。そっち逆だから」

『それを先に言わんか!』


失態だ。恥ずかしい。あまりの羞恥心に、顔が火照る。火が出て焦げて、燃え尽きて灰になりそうだ。


『案内してくれ』


溜め息を付いて、テウの背中を押す。強めに。顔を見られたくなくて、無理矢理前を歩かせた。


「サキさんって、本当はそういう喋り方なんだね」


バッと自分の口を押さえる。今まで気付かなかった。


ニヤリと悪戯そうな笑みに、私の羞恥心は一層高まる。恥ずかしさで、精神が限界に達した私。それは、私を暴力という行動に移させた。


『煩い!』


テウの脚を蹴った。それだけには止まらず、バシンッと音がするほど強く背中を叩いた。


何が”流石私“だ!何が”完璧だな“だ!数時間前の私をぶん殴りたい。


後悔の念と共に、肺の中の空気を一気に吐き出した。


溜め息が既に、癖になりつつあることを、私はこの時悟った。
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