夢 短め

□新・モデルハウス2
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タコパ準備の仕上げに、竹串、取り皿とお箸、グラスに栓抜きも用意して。
椅子に座って、ホットプレートをオンにしてたら、糸目眼鏡が顔を覗かせた。
麿眉に言われたから、ちゃんと部屋着も着てる。
麿眉に、弱いというか、甘いというか。
からかいつつも、実は嫌われないように生きてる気がするんだよね。
もしかして、糸目眼鏡は麿眉ライクじゃなくて、ラブなのかも。
ラブなら、激ラブだよね。
『聞いとるんか?』
『え、あー、聞いてる。聞いてる。若松さんも、来たら食べるでしょ?』
『嫌や』
『え……ん?いいや、じゃなくて?いやや?嫌って言った?』
『言うたで』
『え、ダメなの?何で?』
『何でて、あかんからや。参加はさせんし、食べさもせんよ』
不機嫌丸出しの糸目眼鏡。
『虐め?虐めてるの?相変わらず、若松さんを虐げてるの?』
『ちゃうわ。人聞き悪い事言わんとき。タコ焼き擬きは、身内だけでするもんや。若松は他人やから、参加できんのや』
『タコ焼き擬きに、いつそんなルールできたの?』
『初めからや』
いつもながら、さらりと嘘をつく。
『パシリに使うだけって、最低だよ。今、ご飯時なのに、タコ焼き擬きするって判る状況で食べさせないなんて、可哀想でしょ』
『若松への労いは別の日にちゃんとするさかい、心配いらん』
『労う?ホントに労うの?』
『労う、労う。ごっつ労うて。せやから、これは片そうな』
そそくさと、取り皿と箸を撤収されてしまった。
嘘っぽい口調だった。
ちゃんと労うか、怪しい。
若松さんに確認しなくちゃ。
『翔一、原澤さんから電話あったぞ』
『大御所、何て?』
『スタイリスト変わるってよ』
『……さよか』
一瞬、変な間があった。
揉めたな。
きっと、スタイリストは女の人で、軽く遊んで恨まれたんだ。
『光夏、エロい目で見んのやめや』
『エロい目なんてしてないよ』
『いかがわしい目ぇで、ワシの事見たやろ』
『いかがわしい=エロいなの?』
『せや』
『いかがわしい目じゃなくて、疑わしい目で見たんだよ』
『何でや?』
『スタイリストの変更は、糸目眼鏡が何かやらかしたからだろうなって思って』
『品行方正なワシが、何やらかす言うんや』
『下ネタ言わせようとするなんて、最低』
『ワシ=下ネタみたいに言いなや』
『えー、ほぼ裸のポスター作る男は、下ネタの塊でしょ』
【半分はエロス】って、下品な響きのキャッチコピーも印刷されてた。
『あれは雑誌の編集が作ったんや。ワシ、写真撮られただけやで。しかも、服は上下とも着とったわ』
『乳首もお腹も、出してたじゃん』
『嫁入り前の娘が、恥じらいもなく乳首とか言うたら、あかん』
『男女差別だ』
『区別や、光夏。男は乳首出しても問題ないやろ』
『全くないわけじゃないでしょ』
『全くないわ。それに、見てみぃ。これ』
Tシャツを捲りあげる糸目眼鏡。
『ワシの腹筋は芸術的て、大好評やったんやで』
『露出狂。やっぱ、喜んで作ったんじゃん』
『仕事は楽しまんと』
『あのポスター、自分発信なんじゃないの』
『自分発信やったら、もっと芸術的なん作っとるわ』
『脱いだら全部芸術って事には、ならないからね』
『あのポスター、フェロモン全開やったから、光夏もベッドでピンクな妄想したやろ』
『は?ピンクな妄想って何?』
『ワシとのメイクラブや』
『キモッ』
『光夏、自分、美的感覚と女としての成熟度が未発達過ぎやで。発達させちゃるから、ちょっと膝に乗り』
『やだ、妊娠する』
『ポロリもさせてへんのに、受胎なんかさせられんわ』
『糸目眼鏡ならやる』
『できんから、ヤってやるわ。初めてはベッドにしたる。部屋行こか』
『いい加減、バカな言い合いやめとけバカ二人』
『バカにバカな言い合いやめろて、本末転倒やの』
『私をこんな変態と同類にしないで』
『変態やない』
『生粋の変態でしょ』
『何や。変態に、天然や養殖の違いがあるんかい』
『ある』
『お前ら、マジにバカだな』
『だから、一緒くたにしないでよ』
『ワシは構へんで』
『やだ』
『若松、来ねぇな』
『道が混んどるんやろ。光夏、アイスないんか?』
『ご飯前にダメ』
『まこと半分こするなら、えぇやろ』
『飯前にアイスなんて、食わねぇよ』
麿眉もスラスラ嘘をつく男。
『野菜系なら、前菜になるやん。なぁ、食べよや、まこ。アイス。まこ、アイス、アイス。アイス食べたいんや。まこ、一緒に食べよ』
『ガキかよ。光夏、煩ぇから、アイス食わしてやれ』
『麿眉はダメ親になるね』
『舐めんな。毎年、ベストファーザー賞獲ってやる。証明してやるから、俺の子供産め』
『まこ、自分、ムードなさすぎるで』
『あ、チャイム。若松さんだね』
『カニ缶や』

2018.8.11
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