夢 短め

□新・モデルハウス2
2ページ/9ページ

『この際やから、光夏の貞操についても、誓約書作ろか』
『あ?』
『それ、誰得なわけ?』
『そりゃ、光夏得な話やろ』
『襲われたら、得なんてあるわけないでしょ。誓約書なら、家政婦の契約した時のがあるじゃん。尊重しますって、精神的にも身体的にも尊重しなさいよ』
『ワシは尊重しとるやん。がっついとるんは、まこだけや』
『んだと、テメェ』
『自分、光夏にベロチュー何回しとる?』
『……片手』
『片手では足りんやろ』
『両手は超えてねぇよ……』
『ベロチュー以外も、色々しとらんかったか?』
『……してねぇよ』
『んー?覚えてへんだけちゃうか』
『……盗撮で数えてんのか?』
『せやから、しとらんわ』
『えー』
怪しいのに。
『相変わらず酷い女やな。ワシもまこも邪悪さは大差ないやろ』
『麿眉のが誠実だもん』
『はぁ⁉誠実?まこのどこが誠実や?光夏、暴走する度に襲われとるのに、おかしな事言いなや』
『暴走するけど、反省もするもん』
『ほぅ。ほだされてきとるんやな』
『は?まさか』
『いやいや、ほだされとるよ。えぇか?ワシより、まこのが男関係に煩いんやで。光夏がマンションにおらんと、帰ってくるまで起きて待っとるし』
『糸目眼鏡も、玄関で仁王立ちしてた事あるじゃん』
『ふはっ、血は争えねぇな』
『喧しいわ。まこは、ワシより回数多いやろ。鬼電、鬼メールもする。辰也とさほど変わらんのに、騙されとるで、自分』
糸目眼鏡が力説。
麿眉と私の進展を応援してるのか、邪魔したいのか。
麿眉が、極悪な顔で沈黙。
前科持ちは、言い返せないよね。
判ってて、それらをあげ連ねるから、糸目眼鏡は腹黒い。
『今回は襲うどころか、触れてもねぇよ。冷蔵庫空なのは、翔一もダメだししてたじゃねぇか。全面的に光夏が悪ぃだろ』
『せやな。光夏、きちんと説明しぃや』
開眼した糸目眼鏡は、しつこさ倍増。
『タコ焼き擬きしないの?』
長引く前に、話を逸らさないと。
『する』
『するで』
よし、回避。
タコ焼き擬きは、正義だね。
悪魔達も従順だもん。
『メイン、やっぱカニ缶がえぇか?』
『部屋にないんでしょ?』
『カニ缶くらい、若松に買ぅて来て貰うて。何なら、ものほんのカニでも、や、あかんか。捌くのが手間やな。すぐに使うなら、やっぱ加工済み品か。そや、九良志満の牛スジ煮はどうや?まこ』
『……まぁ、それでも』
『牛スジ嫌なの?好物でしょ?私の作り置き、バクバク食べて糸目眼鏡と喧嘩するくせに』
『……今日は気分じゃねぇだけだ。翔一、いつものカニ缶にしろ』
『さよか。まこは一途やなぁ』
『一途?何に?』
『うるせぇ。さっさと、電話しろ』
糸目眼鏡が若松さんに電話して、メインを待つ事に。
麿眉が、ホットプレートをテーブルに準備。
プレートをタコ焼き用に変えてくれてる間に、私はキッチンからオリーブオイルと竹串を運ぶ。
『刻め』
摘みたてのパセリを、麿眉が偉そうに鷲掴みで持ってきた。
『まだ早いよ。香りがとんじゃう』
『いいから刻め、ブス』
『暴君眉毛』
『チーズ出てねぇぞ』
『これから出すの』
『まこ、シャワー浴びてくるさかい、カニ缶届いたら頼むわ』
『ああ。シャワー浴びんのはいいが、ちゃんと服着て戻って来いよ』
『ワシの裸なんぞ、見慣れとるやん』
『パンイチで、タコパには参加できねぇからな』
『自宅なんに、タコパにドレスコードあるて。さぞかし豪勢なタコパなんやろなぁ。楽しみやぁ』
『ふざけてねぇで、早く浴びてこい』
痴話喧嘩のようなかけあいをしてから、糸目眼鏡がリビングを出ていった。
『見とれてねぇで、手ぇ動かせ』
『はいはい』
麿眉がマストにしてる刻みパセリ、シュレッドチーズをテーブルに並べて、生地を作る。
『生地、豆乳で作れよ』
『作ってるでしょ』
豆乳で生地を作るのも、いつの間にかマストになっちゃったんだよね。
麿眉、豆乳は好物だったわけじゃないのになぁ。
『麿眉、電話鳴ってない?』
『……翔一のだ。若松だな』
ソファにあった糸目眼鏡のiPhoneを、拾い上げる麿眉。
『もしもし……あぁ、原澤さん。お疲れ様です。花宮です』
若松さんじゃなくて、別の電話だったみたいだ。
外面全開の声で話始めた麿眉。
優雅にソファに腰かける。
『今、シャワー浴びてるので、代わりにお聞きしますよ』
麿眉の演技力に大笑いしそうだ。
ニヤニヤしてたら睨まれて、慌てて生地を完成させた。
『さて、後は、お皿とお箸か』
まだ通話してる麿眉は、立ち上がるとリビングを出た。
聞かれちゃ、ダメな話しか。
二人とも、芸能人なんだもんね。
報道制限とか、あるんだよね。
『光夏、何で客用の箸出しとるんや』
『え?』
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ