夢 短め
□君が好き
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『お待たせしました』
『ありがとうございます』
店員さんにお礼を言って、スマホを取り出す。
卵でくるりと包まれ、ケチャップが縦にかかってる。
彩りには、パセリが添えられてるだけのシンプルなオムライス。
黄色、赤、緑がお皿の上で鮮やかな、正統派の一皿だ。
『いただきます』
撮影してから、スプーンを持つ。
チキンライスも丁寧に作られてて、鶏肉の軟らかさにニンマリ。
混ぜ物なしの卵は、しっかりとチキンライスをまとめて、ハインツのケチャップの濃厚さとベストマッチ。
丁寧な仕事が判るのに、安価でボリュームもある。
安定のオムライスで、欲張ってもう一皿行っちゃいそう。
食後のコーヒーも追加して、続きを堪能。
温かい物は、匂いがコーヒーの香りの邪魔になると、トーストくらいしかカフェ・ローノにはない。
こういうシンプルなオムライスなら、ご飯物を出してもいいんじゃないかと思った。
オムライスを載せられる大きさの皿がないけどね。
コーヒーはあっさり目のブレンド。
食後には適してるけど、もう少しリッチなのが欲しかった。
コーヒー専門店ではないし、値段を考えたら、丁寧な仕事の店だからよしとした。
その後もマップと自分発見のショップを覗いて歩いて、テイクアウトオーケーのカフェを見つける度に、一番人気のサンドイッチを購入。
写真と感想と領収書があれば、何食べてもオーケーって事は、テイクアウトで夕食にしてもオーケーだよねと、都合よく考えつつ帰路についた。
帰宅して、サンドイッチを冷蔵庫に入れてから入浴。
シュワシュワな入浴剤で、脚の怠さを解放した。
冷蔵庫のサンドイッチをテーブルに広げたのは、髪の毛をタオルで包んで、ビールを一口飲んでから。
スマホで撮影して、マスターのパソコンに送信を繰り返す事、約30分。
『よし、終了』
スマホを卓上ホルダに載せて、試食開始。
もちろん、ビールを楽しんでだ。
判る限りの中身の詳細と味の感想をルーズリーフに書き出し、領収書をクリップ留め。
全部は食べきれないから、翌朝に残した。
『やっぱ、西側だな』
昨日のメモを引っ張り出して、明日の行き先を考える。
確実に購入を予定してるショップは二店。
後は、掘り出し物を探すつもり。
店の雰囲気に似合いそうな物が、あんまり見つからなかったから。
『あ』
歯磨き前に、玄関先の収納からキャリーケースを引っ張り出す。
割れ物を手に提げて、人出の多い街を歩き回るのは危険でしかない。
買い出し三日目の明日は、困った事に土曜日なのだ。
『これでいっか』
緩衝材代わりに、ハンドタオルやフェイスタオルを入れて買い出し準備は完了。
のんびりニュースを眺めての歯磨きを15分して、直ぐに就寝した。
朝、サンドイッチの残りを食べて、天気予報を確認。
晴れ。
混みそうだなぁ。
楽な格好でキャリーケースを持って、吉祥寺へ出発。
案の定、吉祥寺に近づくにつれて、人出は多くなった。
改札を出て、一軒目のショップに向かう。
渋目の和物を二枚購入して、キャリーケースに保管。
次のショップでは、お洒落なデザインが縁に一周施されたアンティーク感のある洋物を三枚購入。
どれも値段は3,000円前後で、食洗機オーケーな品。
カフェ・ローノに食洗機はないけど。
目ぼしいショップはこれで終了。
ここからはインスピレーション勝負だ。
右と左、どっちに行こう。
人の流れに従って右にした。
ペットボトルの水を片手に歩き続けて、目についた雑貨店と瀬戸物屋で一枚ずつゲット。
そこから小路に入って、さ迷いながら四枚追加。
奏ちゃんの結婚祝いに有田焼の夫婦茶碗と螺鈿細工の施された箸、ベビー用のローズウッドの匙をチョイスして歩道に出たら、白河さんと呼びかけられた。
『やっぱり、白河さんだ』
振り返れば、なんと花宮君。
『旅行ですか？』
手元のキャリーケースを見てだろう質問。
『買い出し』
『そう言えば、言ってましたね』
『うん。……花宮君も買い物？』
ホントは聞く必要もないんだけど、仮にも勤務先の常連。
塩対応ばかりはできない。
『ええ。今日明日は、体育館の設備点検で部活ができないので』
そう言えば、破棄したメモにはバスケ部と書いてあったっけか。
『古本屋巡りをしてました』
やっぱ本好き。
カフェ・ローノでも、いつも読書してるもんね。
『キャリーが必要な買い出しなんて、大変ですね』
『偶々だけどね、じゃあ』
『コーヒー飲みませんか？』
じゃあねと言おうとしたら、被せられた誘いの言葉。
『え』
まさか、ナンパしてくるとは。
『あからさまに警戒しないでください』
ありゃ、顔に出たか。
『年下とデートは嫌でしょうから、コーヒーの研究って事で、この近くにあるギャラリーに行きませんか？なかなかの逸品を淹れてる老婦人がいるんです』