夢 短め

□罰ゲーム
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放課後、栞とバスケ部の体育館に向かう。
音楽室じゃなくなったため、昼休みに麻友、水樹、栞と相談した。
麻友はピアノ教室の日で、付き添い不可。
水樹は文化祭のミーティングで不可。
結局、暇人は栞のみで。
罰ゲームの証人で同行して貰うのはいいけど、栞、気配消すの下手なんだよね。
どうなる、私の罰ゲーム。

体育館の鍵は開いてた。
栞と中に入ると、花宮はきてない。
どこに隠れたらいいかと、栞が見回す。
『あれ、真壁ちゃん。こんなとこで何してんの?』
ステージ横からジャージ姿が、出てきた。
『あ、原君』
栞と同じ委員の人らしい。
『今日の部活、ないんじゃないの?』
栞が少し驚いて聞く。
『レギュラーは基礎トレとミーティングあんの』
『そうなんだ』
『で、何してんの?そっちの子、も。あ、れ。白河さん?』
なんでこの人、私の名前知ってんだろ。
『原、今日の練習はなしって朝言っただろ』
体育館の入口に花宮がいた。
制服で。
『え、マジ?』
『さっさと着替えて帰れ。家で課題でもしろ』
『あ、うん。真壁ちゃん、またね』
原は焦った様子でステージ横の扉に入り、私物?を抱えて小走りに出ていった。
『真壁さんが俺に用があったの?』
『え、違うけど』
『なら、外で待ってて欲しいな』
花宮はやんわりと栞に退室を促す。
外で待ってるねと、栞は扉を潜った。
完全に閉じてなかった扉を、花宮が閉めた。
『白河さん。用件聞いても?』
『あ、うん』
花宮が私の正面に立つ。
『花宮が好き』
はい、罰ゲーム終了。
早くふって。
帰るから。
『……白河さん』
はい。
『俺も好きだったんだ』
そうだよね。
ふってくれてありがとう。
『一年の頃からずっと』
一年の頃から。
あれ?
え。
好き?
『両思いだなんて嬉しいよ』
『は?』
思わず後ずさる。
『今なんて?』
『俺も白河さんが好きだよ』
花宮が蕩けるような笑顔で近づく。
いや、待って。
こんな発展、頭になかったよ。
困る、困る。
困るから。
『あの』
好きでもない男とカレカノなんて、人生の罰ゲームもいいとこだ。
なんとかしなきゃ。
『私も両思いだなんて思わなかった。いい思い出ができて、嬉しいな』
『白河さん。それってどういう意味?』
『受験前にいい思い出をありがとう。これで志望大学に集中できる』
力業だけど、通すしかない。
『白河さん。お互いの勉強の邪魔になるつきあいをしなければいいんだよ。白河さんが希望校に入れるよう、フォローするし』
何それ。
勉強見ますって?
いや、ムリ。
マジ、勘弁。
学年1、学校1のイケメンとつきあうなんてムリ。
自殺するようなもんだから。
『白河さん、これからは下の名前で呼んでもいい?』
花宮が手を握る。
『ごめんなさい!』
手を振り払ってしまった。
花宮は呆然としてる。
『つきあえないの』
『つきあえないって。どうして?両思いなのに』
花宮は泣きそうだ。
『……ごめん。罰ゲームなの』
『罰、ゲーム……』
『ごめんなさい。まさか、花宮に好かれてるとは』
思ってなかった。
『……今までもこんな事してきたの?』
『え、ううん。初めて』
『そうだよね。こんな遊びを繰り返してるなら、最低だよね』
『……ホントにごめん』
『いいよ。罰ゲーム拒否したら、立場悪くなるだろうし。嫌々に見えなくて、本気にして両思いなんて舞い上がった俺がバカだよね』
『花宮、ご』
『なんて言うわけねぇだろ、バァカ!』
『えっ』
『俺がバカなわけねぇだろ。罰ゲームだろうが、お前が俺に告ったのは事実だ。この瞬間から恋人だからな。全校生徒に知らせてやる。学校1モテるこの俺を独り占め。どれだけの女に恨まれるか楽しみだな。教師もお前をどんな目で見るかねぇ。俺に相応しい学力じゃねぇよなぁ』
何こいつ。
誰?
目の前の花宮に、言葉がでなかった。
『ふはっ、その顔。いいな、楽しませてくれんじゃねぇか』
『あの』
『なんだ、光夏』
呼び捨てって。
『つきあわないから、呼び捨てやめて』
『あ?』
『花宮好きじゃないし、二面性とかムリだから』
『普段のいい子ちゃんを好きじゃないなら、今の俺の方が好みだろ』
『今の花宮も好きじゃない』
『……ふぅん。別にいいぜ。高校中退になるわけか』
『は?』
『俺にアプローチしてる女達が、俺をふった女を許すと思うか?お前、壮絶に苛められるぜ。皆、犯罪行為も平気でしてくるぞ。頭の悪い連中は、低俗な連中に襲わせるくらいする。ハメ撮りネットに流されて学校にいれる程、メンタル強くねぇよな?光夏』
花宮の語る内容が非現実的過ぎて、理解不能。
『俺とつきあえば回避できる』
こいつ悪魔だ。
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