夢 短め

□罰ゲーム
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『はーい、光夏負け。罰ゲーム!』
放課後、ウノで連敗したのは今日の運がなかったからだ。
日頃の行いとかじゃない。
絶対。
『罰ゲーム何?』
『ちょっと待って。はい、引いて』
カードをトランプのように広げる麻友の手から、一枚引く抜く。
『わ、異性に告白』
『え、やだ』
『昼食に黒糖蒸しパンを食べてるクラスメートに限る?』
『え、購買に黒糖蒸しパン売ってなくない?食べてる人いなかったら、なし?』
水樹が不満げに言う。
彼女は先週、罰ゲームで校庭を50周してる。
そして、陸上部の顧問に勧誘された。
『期間を設けるのはどう?』
栞がウノを片づけながら提案。
黒糖蒸しパンが曲者なので、一ヶ月でも対象者はでないかも。
半年だねと、まとまった。
無期限よりはマシか。
『黒糖蒸しパンが昼御飯って、デブかオタクだよね』
『デブでオタクかもよ』
『ダブルパンチね』
『告白するだけだから、トリプルパンチでも関係なし』
そうして、この二ヶ月ほど、私達4人は学食に行かず、クラスでお弁当や菓子パンを食べてる。
放課後のウノは停止中だ。
『なんか、なさそうな気がしてきた』
水樹がイチゴ牛乳を啜り、目を細めた。
麻友も頷く。
細かい事を書いちゃダメねなんて、栞は犯人のくせにさらっとルール変更しようとしてる。
『ねぇ、今回はなしでもよくない?菓子パン飽きたし、学食行きたい』
麻友が水樹を見る。
『ま、10回に1回くらいはなしになるもんね。誰かさんがやたらと細かい条件つけるから』
『罰ゲームなんだから、やりづらくしないとダメでしょ』
栞が日の丸健康茶を机に置く。
『同じピンポンダッシュだって、自宅なら簡単でしょ。だから、ハードルの高い、雷さんの家って書くのよ』
『雷さんは2次元にしかいない』
水樹が膨れる。
『明日でちょうど二ヶ月だし、明日でなしにしよ。お母さんも面倒だってお弁当作ってくれないもん』
『ホントに菓子パンに飽きたんだね。麻友』
『光夏みたいに自分で作れたら、まだ待てるけどさ』
学食メニューがリニューアルしたのもあって、明日で罰ゲーム解除が決定。
なのに。
なんでソイツは邪魔をしたのか。

麻友が立ち上がったのが合図だった。
水樹は大口開けてていし。
栞も目を見開いて。
私は、ソイツを凝視した。
『嘘』
それもそのはず、黒糖蒸しパンを食べてるのは学年トップの花宮だから。
花宮は袋から取り出した黒糖蒸しパンを指で千切って口に。
食べ方のキレイな男だ。
しかし、なぜ?
甘い物嫌いだよね?
モテ男と名高い彼は、個人情報が著しく流出してる。
誕生日、身長、体重、血液型。
住所、親の仕事、行きつけの書店、飲んでるコーヒーのブランド、糖分ゼロの(もはやチョコを名乗れない)チョコレートが好きな事。
ファンクラブの子に聞けば、スラスラ話してくれる。
甘いものはNGと判明したのは去年のバレンタイン前で、女子達はこぞって甘くない手作り菓子を渡したらしい。
花宮は、気を使わせてゴメンねと王子様対応で、さらにファンを増やした。

『罰ゲーム継続ね』
栞が静かにお茶を飲んだ。
まさか、学年トップに告白するはめになろうとは。
ま、モテないブサメンに告白してマジに喜ばれても困る。
花宮なら、あっさりふってくれるだろう。
さっさと終わらせてウノ再開だ。
『放課後は部活か……昼休みにでも呼びだすか』
私は呼び出すべく、付箋紙を取り出した。
帰るついでに花宮の靴箱を開け、二段にしきってる仕切り板に貼る。
《花宮君
 明日の昼休み、音楽室に来てください
 白河》
合唱部員の麻友が、ピアノ伴奏の練習と称して音楽室の鍵を借りられる。
隣の準備室で麻友、水樹、栞が隠れて見る。
朝、鍵を借りて準備は万端。
花宮は呼び出しをすっぽかした事はないと聞く。
今日の昼も来るだろう。
バスケ部は、朝練で朝礼ギリギリにしか教室に来ない。
私は水樹と、廊下に設置されてるクリーナーで黒板消しをキレイにしてた。
『白河さん』
振り返れば花宮。
ジャージ姿。
部活中?
『昼、生徒会のミーティングがあるんだ。放課後、バスケ部の体育館にして貰ってもいいかな』
『あー、忙しいなら、日を改めてでも』
私は笑顔になった。
横にいた水樹は目を細めアヒル口。
呼び出しを断られたら、その時点で罰ゲームは終了なのだ。
花宮、超ファインプレー。
『今日の放課後は部活がないから、大丈夫。放課後、バスケ部の体育館に来て』
花宮は微笑んで去っていった。
『花宮、律儀だね』
水樹が感心する。
『……律儀?』
腑に落ちない。
異性からの呼び出しなんて、ほぼ告白。
毎回告白を断るなら、呼び出しを断ればいいのに。
そこまで告白されたい?
自分大好きなナルシストだと、考えながら一日を過ごした。
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