夢 短め

□新・モデルハウス2
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『お帰り』
『お前、最近自炊してねぇだろ』
『え』
日曜の22時。
マンションのリビングでTVを観てたら、予定外に麿眉が帰宅。
ソファに鞄を置く麿眉に声をかけたら、ただいまとも返さずに詰め寄られた。
『冷蔵庫、空に近ぇ。最近の作り置きがねぇよな。外食しまくりとは、いい身分だな』
『外食、しまくってるわけじゃないよ』
マンションで食べてないけど、飲食店で豪遊したりはしてない。
『あんなに冷蔵庫が閑散としてんの、今までなかったじゃねぇか。何があった?』
『刑事みたい』
『検事並の取り調べしてやるから、そこ座れ』
『何でそんなに怒るの?』
『お前、友達いねぇだろが』
『え、何?いきなり』
『アイス屋によく話す同僚はいても、飯食う相手は一人もいねぇだろ。プライベートに一緒に出かけるようなな』
『いない、けど。喧嘩売ってる?自分だって、友達いないくせに』
『誰と飯食ってんだよ……緑頭辺りと、出かけてんのか』
『え』
その顔。
拗ねてる?
麿眉、私が緑間さんと夜出かけてると思って……。
『つきあって』
『ないよ』
『被せてくんな。犯すぞ』
『誰ともつきあってないよ。誰かとつきあうなら、麿眉に報告する』
『……報告かよ。どうせなら』
俺とつきあうって宣言すりゃいいのに。
そう、溢した麿眉。
駄々っ子モードに突入しそうな雰囲気だ。
『……ご飯食べた?』
つきあえない事に謝ると怒るから、スルーしておく。
『冷蔵庫なんもねぇのに、何作れんだよ』
『タコ焼き擬きはいつでもできる。小麦粉とチーズとパセリは常備してるもん。メインは、糸目眼鏡の部屋をガサ入れしたら、何かあるでしょ』
『ふはっ。お前も大概だな。花宮の血は、疑いようがねぇな』
『分家だから、麿眉には負ける』
『言ってろ』
『カニ缶あるかな』
『ソーセージでもいいな』
キッチンで使い捨てのゴム手袋を装着し、糸目眼鏡の部屋に侵入。
『あ、これテレビで売り切れ続出って言ってた、スペインのオリーブオイルとトマトソースセットだ』
『干し芋、あずき缶。こんな甘いモンも食うのか、翔一』
『カニ缶ないなぁ。ソーセージもハムもなしか。干し芋とあずき入れる?』
『バカ言うな。塩味探せ』
棚の奥を探る麿眉に、睨まれた。
『冷蔵庫も、飲物だけだ……』
『ビールだけか』
『うん』
『何しとるんや』
『『ガサ入れ』』
『不法侵入やで』
『ん?』
声の方を見たら、糸目眼鏡がドアノブを掴んで立ってる。
『あ、糸目眼鏡』
『翔一。大阪で泊まりじゃなかったのかよ』
『お帰り』
『ただいま、って。いやいや、光夏。何、さらっとかわそうとしとるんや。アットホームなムード醸し出しても、誤魔化されんで。二度とガサ入れしませんて、自分ら正座したやろ。前回』
『この俺が、書道以外で正座なんて、ふはっ。ねぇな』
『この状況でドヤ顔はおかしいやろ。そんなら、ワシが前に見たあれは、夢か?幻やったか?』
『覚えてない』
『ふざけんなや』
『重要な事は、書面にしねぇと』
『口約束でも、守りぃや。親しき仲にも礼儀ありやろ。ベロチューでも済まんで、光夏』
糸目眼鏡が開眼したから、麿眉の背中に隠れる。
『麿眉……』
『平気だ。タコ焼き擬き作んのに、メインがねぇ。何とかしろ』
『居直り強盗かい』
『タコ焼き擬きだぞ、翔一。お前、食わなくていいのかよ』
『……誓約書、書いて貰うで』
今日もタコ焼き擬きは最強だ。
『メイン、メインな。今日はカニ缶はないなぁ』
『えー』
『自分が遊び歩いとるから、メインないんやろ?』
『む』
『冷蔵庫、保存品ばっかやん。キッチンに立ってへんやろ』
糸目眼鏡にも、言われてしまった。
そんなに冷蔵庫スッキリ?
漬け物はギッシリ入れてるし、メイン食材になるような生の肉や魚は、元々ストックしてないのに。
『緑生会病院の跡継ぎと出かけとるんやろ?』
それも言われてしまった。
緑間さんとは、土日しか会ってないのに。
『緑頭とは、つきあってねぇとよ』
『ほなら、何であないに頻繁に会っとるんや』
『土日だけだよ。緑間さん、ソフトクリーム買いに来てくれて、帰り送ってくれる』
『一緒に飯も食ってるやん』
『え』
『お前、ソフト販売の時は早上がりだろが。何で毎回21時過ぎに帰宅してんだよ』
『え、何で、麿眉が私の毎回の帰宅時間を知ってるの?』
『…………俺の質問に答えんのが先だ』
『あ!盗撮でしょ。糸目眼鏡の隠しカメラで見張ってるんだ。そうなんでしょ?』
『何で、隠しカメラはワシのになるんや』
『そういうの仕掛けるのって、糸目眼鏡の方だと思うから』
『平然と言うたな。あんまワシ舐めた事言うとると、犯すで』
『従兄弟だね。麿眉も、さっきそれ言った』
『何や、まこ。また暴走かいな』
ニヤニヤしながら、麿眉に抱きつく糸目眼鏡。
久々に、怪しい絵面だ。
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