携帯のアラームが鳴り響く。煩わしいその音を止めて、いつものように顔を洗って、歯を磨き、窮屈なスーツに着替える


珈琲を片手にテレビをつけると丁度占いの時間にあたった


「今日の天秤座の人の運勢は……

忘れものがあるかも!!置き忘れには特にご注意を!そんな貴方のラッキーパーソンは……
恋人です!今日も1日頑張って行きましょう」


余計なお世話だ、と心の中で毒づく
簡単な朝食を頬張りながらニュースのチャンネルを変えた




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ガタンゴトンと揺れる電車の中、昨日の疲れが溜まっている所為か眠りに誘われた
途端にガタン、と大きく電車が揺れた
慌ててつり革をぎゅっと握りしめ、転倒することは避けられた


そうこうしている内に、降りる駅に着き人混みのなかを分けて改札口へと向かう
改札を出ると、誰かが後ろから肩を叩いた


「よっ!」


陽気に声をかけてきたのは会社の同僚のサッチ
自慢のリーゼントは今日もフランスパンのようだ。サッチ曰く、リーゼントは誇りらしい


「おう」


「なぁなぁ昨日の会社の子達……」


「いつも通りだよぃ」


「またかよ。少しぐらい優しくしてあげれば
絶対彼女、いや嫁さん貰えるのに」


「んなもんいらねぇ」


冷たいねぇ、と呆れたようにサッチは言った
なんで化粧が濃くて、香水がきつい女を好きにならなきゃいけないんだ
いや、例えそうじゃなくても俺はこの先
恋人を作ることはあり得ない
心の中で確信しているとまた肩を捕まれた
今度は誰だ?と振り向くとそこにいたのは


「あのっ、はぁ、お財布、落としましたよ」


汗で前髪が少し濡れていて、頬がほんのりと
ピンク色に染まった背が小さな女子学生だった

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