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□二人の悪魔
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「今日はいい天気だなぁ、由夜。こんな日は絶好のデート日和だと思わないかい?仔猫ちゃん?」
「そ、そうだね…。」
「…ちっ。うっせぇぞクソ松!!」


ど、どうなってるんだろう…。私は今、幼馴染みのカラ松と一松にそれぞれの腕を引っ張られ、動物園へとやってきた。
お、落ち着け私。なんでこんなことになってるんだっけ??事の発端は会社の休み時間にきたトド松からの電話だった。
内容は、動物園のチケットをもらったんだけど、用事があっていけないから代わりにいかない?というものだった。3人1組で入れる券らしく、他の兄弟にも声をかけたらたまたま暇だったカラ松と一松が一緒に行く…ってことになったんだけれど…。正直私はこの二人がすごく苦手だ。
カラ松は意味わからない言葉を話してくるし、一松は全く私と話してくれないからだ。昔は二人とも普通に仲良しだったのに…。
その二人と行ってこい!と言われて断ろうとも思ったが、これを機会にまたなかよくなれれば…なんて思って二つ返事でOKしたんだけど…。


「ほら、由夜。俺のとなりにいた方が安全だ。こっちへ来い。」
「…は?なに抜かしてんだクソ松。てめぇのとなりのどこが安全なんだよ。」
「あ…あのぉ、お二人さん…。いい加減、手をはなしてほしいんだけど…。」


入園ゲートに入ってからも彼らは私を挟んで喧嘩をし続ける。駅についてからここまで、ずっと手を引っ張られ続けてる私の身にもなってほしい。だんだんとイライラしてきた…。


「ねぇ!離してって…。」
「ほら由夜が痛がってるだろう。さっさと手を離せ、一松。」
「だったらテメーが離せよクソ松。」


全く話を聞いてくれない二人に、ついに私は怒りが爆発してしまいつい大声を出してしまった。


「いい加減にしてよ!離せって言ってるでしょばかっ!!」


驚いて手を離した二人に、それでも怒りが収まらない私は吐き捨てるように更に言葉を続ける。


「二人とも喧嘩ばっかりしてて、ぜんっぜん楽しくないよ!これならおそ松とかトド松と一緒にきた方がずっと楽しかったよ!ばか!!」


私は唖然としている二人に背を向けて、もうひとりで回ってやるんだからと駆け出した…というか駆け出そうとした。よく考えたら私、今日ヒールだった!そう思ったときにはすでに遅く、私はバランスを崩し倒れそうになった。


「「由夜!!」」
「きゃっ!」


その瞬間いきなり腕をつかまれだきよせられる。あれ…私この人の匂い知ってる…。とっても落ち着く匂い…。一瞬変態チックなことを考えてしまったが慌ててすぐに顔をあげると、そこには見慣れたカラ松の顔があった。


「由夜!大丈夫か!?どこか…怪我してないか?」
「え、あ…だ、大丈夫…///」


私は慌ててカラ松から離れて、立ち上がろうとしたが、腰に力が入らず立てない。それを見ていた一松が、今度は優しく私を抱き起こす。そして振り絞るような声で、耳元で「…ごめん。」と呟いた。
顔に熱が集まるのがわかる。なに、なに、なに??/////何で私幼馴染み二人にこんな顔赤らめてるのよ!///落ち着け、落ち着け私!
2、3回深呼吸をして落ち着かせてから二人の顔を交互に見ると、二人はしゅんと眉を下にさげてあからさまに落ち込んでいた。それを見て、なんだか昔の二人を見てるみたいで少しだけ可笑しくて、そして嬉しかった。
なんだかんだ言っても二人とも昔のままで優しいのだ。それなのに勝手に壁をつくって二人から遠ざかっていたのは私の方だったんだ。私は二人の頭を交互に撫でると、二人に謝った。


「ごめんね、急に怒ってひどいこと言っちゃって…。でも…助けてくれてありがとう。」
「いや、俺の方こそ…ごめん。」
「…ごめん…。」


皆で謝って顔を見合わせて笑った。


「じゃぁ二人とも、折角だから動物園楽しもっか!」


今度は私がそのまま二人の手を握り、動物園の奥へと進んでいった。
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