世界を彩る

□#16
2ページ/2ページ


気持ちの読み取りが難しいその表情は、又兵衛にプレッシャーを与えるようでもあった。
だがどうやらその行動はふざけているわけではなさそうだ。


「斬るんですか?」


真っ直ぐな目を向けて問いかける。
その純粋な目は又兵衛の心の中を透かすようで、居心地の悪くなった彼は目線をそらした。


「…斬らないとは言いきれないでしょお」


そう言って誤魔化す仕草を見せた彼は、手に持った包丁の切っ先を下げた。

***

仕組みまではわからなくても、用途と簡単な構造の話をして各部屋を回る。
必要不可欠なトイレと洗面所、キッチンの説明はしっかり納得できたか確認を何度も取った。
ぐるりと家中を周り、元のリビングに戻ってきたところで織星はもう一度彼らに確認をする。


「これが、私たちの生きる世界の家です。わからなかったところがあればまた説明しますけど、大丈夫ですか?」


そう聞くことがまるで当たり前であるような言葉。
気遣いや心遣いと呼ばれるそれは、彼らにとっては貴重なものだ。
生死をかける中で、そんなものをしている心の余裕というのはあってないようなもの。
それらをするということは、心の余裕やゆとりがあるからこそのものだ。


「大丈夫そうですね」


返事のないことに自己完結させた織星は、そう告げるの彼らをまたリビングへと迎えた。


.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ