世界を彩る

□#13
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戦いの末路は簡単にわかるそれに織星は眉を垂らす。
どうやらこのままでは解決しないし、最悪犠牲になるものが出てくるだろう。


「全て説明します。ですから、場所を変えましょう?」


そう提案した織星はこの場で唯一冷静な頭を持っていた。

***

三人で張り詰めた空気のままリビングへ移動する。
かすがや孫市、吉継の様子も気になるが彼らを二人きりになどできるはずもない。
一触即発の雰囲気は見逃してはいけないものだ。


「えと、とりあえず座ってください」


ソファを進める織星。
一人用に織星、L字のそれの両端に三成とその男を座らせ彼女はゆっくりと深呼吸をした。
座布団にはない深く沈む感覚に一瞬表情を変えるが、それはすぐに隠され鋭い視線を向けられる。


「とりあえず、ここは貴方がいた世界ではありません。それを、理解してください」


いきなりの本題に彼は随分と訝しんだ目をする。
けれど言葉は発せず、視線で続きを促した。


「ここは、貴方がいた世界のおよそ四百年後の世界です。争いもなく、平等が重んじられる平成の世の中で、戦いを知らない、それが当たり前の世界です」


スラスラと告げるのは四人に話したことと同じ言葉だ。
三度目になると躓(つまず)くこともなく淀みなく流れ出る言葉だが、それでも言葉にする度に彼らとの差をヒシヒシと感じる。


「それと、あなたのような境遇の人がまだ三人います」


そう告げると、彼は鋭い視線にさらに刺を含ませた。
真一文字に引き締められていた口元がゆるりと動き出し冷めた声を紡ぐ。
その言葉は問いだった。


「他の三人とは誰ぞ?」
「かすが、雑賀孫市、大谷吉継です」


そう言葉を返せば、彼は目を細めた。
懐かしむというよりはなにかを思案するようなその動作。
何を言われるか、何をされるかわからない状況でのそれは酷く不安であった。
けれど、紡がれた言葉は理不尽なものでも罵るようなものでもなかった。


「ならば大谷に会わせよ。話の通じる者と話すわ」


その言葉は、願ってもないものだ。
しかしそれと同時に、三成は眉間にシワを寄せていた。


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