この世成らぬ地の
□#11
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振り向かない彼女と、手を振って見送るような真似はしない鬼灯。
けれど彼は確かにその言葉に喜びを感じていた。
***
不喜処についた蓮は明かりが灯る不喜処職員用の居住区に向かう。
監視員である鬼に事情を話して中に入れてもらえば、そこからはもう早かった。
匂いを嗅ぎつけてやって来たシロ。
パタパタと振るしっぽはやはりくるんと巻かれていて可愛らしい。
ぐいぐいと服の裾を引いて案内する姿は、愛らしくて堪らなかった。
「俺、今さらだけど」
前を向いたままのシロはそう切り出した。
なにが今さらなのかを待つようように沈黙をすれば、シロはくるりと蓮の方を振り返る。
くりくりの真っ黒な目は純粋にまっすぐ見つめている。
「あなたが人間じゃないのわかるよ。鬼でもないし、生きてもいない。でも、俺たちの前にいる。これって不思議だね」
楽しそうな声音で、一般的な鬼たちなら気付かないことを言いのけたシロ。
動物だからわかるのだろうそれに、蓮はくすりと笑うと小さな声で「内緒にしてよ」とシロに頼んだ。
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