メモ

□逆さまの砂時計
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聖母のような笑みにセンゴクの肌が粟立つ。
そして紡がれる次の言葉を待った。


「時を戻すわ。この世界が間違ってしまった時間へ。記憶は消えるけれど、体には残っているはずよ。失敗の記憶が、ね」


そう残し、少女はするりするりと解けるように姿を消した。
残されたセンゴクはただ、少女がいたその場を見つめていた。

***

苦しくて仕方ない胸を、ワイシャツの上から握り締める。
悔しくて虚しくて仕方ない。
助けられなかった親友に続き、末っ子も、父も、沢山の家族も失った。
空虚な瞳は腹立たしいくらいに清々しい青空を写している。
しかしそんな時に、彼女はさも当たり前に現れたのだ。


「こんにちは、お邪魔するわね」


ふふっと似合わない笑みを浮かべる少女。
敵だろうに、鉛のように重い重たい体は動かない。


「あら、警戒しないで?私はあなた達に希望を与えに来たのよ?」


その言葉の真意が理解できない。
希望など、もうない。
失うことで心はもう壊れかけているのだ。
希望などという言葉を信じて絶望するのは辛い。


「ふふっ信じなくてもいいわ。ただ、今は全てを委ねて…」


そう言葉にし、両手を広げる少女。
その両手から舞い上がった数多の見慣れぬ蝶達に、彼らはただ誘われるように目を閉じた。


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