メモ
□サソリの毒
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時の流れは幾重にも重なり、事一つで違う歯車を廻す。
輪廻転生は永遠を記し、まるでメビウ スの輪のように永久を造る。
「怪異とは世界そのものなのだから、私という怪異が前触れも予告もなしに突然現れるのも、 実は自然で当たり前なことだと言い得るじゃろう」
壁の上、しなやかな尾を一降りしたのは紫紺のサソリだった。
日常で話すサソリなど見れるものか。
否。
実際問題にはそんなものはいやしない。
それは怪異。
人の思いが象ったものだ。
***
ある日、ハンジはリヴァイの首筋に見慣れないものを見つけた。
「リヴァイ、刺青なんてしてた?」
「刺青?」
「ほら、ココ」
トントンと指先で首を叩くハンジ。
叩かれたそこを掌で撫でるリヴァイ。
すると指先が刺青に触れた瞬間、カッと眩い閃光が走った。
そしてどこからともなく人型が姿を現した。
「ようやっと見つけてくれたか、お前様。長かった。いや短かった。しかしわらわには永久だったのじゃな」
クツクツと笑いながら現れた人型は長いおさげを揺らし、どこかの民族衣装のような格好だった。
見知った顔ではない。
「…誰だテメェ」
「誰だとは心外じゃ。お前様、わらわはお前様の一部じゃ。所詮は怪異なのじゃが、お前様には深く根付いたのじゃから、 もうすでに一部なのじゃよ」
目を弓なりに細めて笑う彼女。
あからさまに不審なその女。
目を細めて彼女を訝しむリヴァイはその手を拳に変えて彼女へと繰り出した。
鋭く重たい一撃が女に減り込む、その瞬間。
「知ってはおったが、手を挙げるのが早いのう。わらわに傷をつけることはできぬぞ?」
にんまりと笑った顔はそう告げた。
その証拠におさげがまるで意志を持っているようにその拳を防いだのだ。
いや、持っているようではなく、持っているのだろう。
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