抜き身に気を付けて

□#24
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主と認めていないのに主面されても、という感情から初日は随分ごたついたがそれももう問題ない。
これからはまた新たな1日目を始めていけばいいのだ。
前審神者が教えていなかったモラルなどを日々指摘しながら、忍は忙しい日々を過ごす。


「部隊貼りだしといたんで見といてね、いってきまーす」


バタバタと忙しない朝7時。
彼女が政府職員として出社する時間帯はいつもこう騒がしい。
引っ掴んだおにぎりを頬張りながら忍は門を潜った。
置いていかれたように残された刀剣男士たちはその後ろ姿を見送ってから自分たちの用意を始める。
忍が審神者になってから、近侍は小狐丸が務めていた。
貼り出された編成と行き先を記憶し、全員揃う朝食の席で指示出しをする。


「では一同、本日も頼んだぞ」


小狐丸のその言葉を皮切りに彼らが動き出す。
遠征を命じられたものは装束に着替え、端末を操作し目的地に向かう。
出陣を命じられたものは班長の付けるインカムから聞こえる忍の指示に従い、時代の歪みを正す。
ほかの審神者と違い、昼間は昼間の仕事がある忍は部隊長から聞く戦況を元に指示出しをするが殆どは現地にいる彼らに任せていた。
怠惰ではなく、唯一喜ばしい前審神者の功績である"経験値"を信頼した結果だ。


「中傷3名、もしくは重傷者が出た時点で即本丸に戻るように。戦闘中断した場合、怪我したメンツを入れ替えて走り直し。編成は各自の判断に任せるからあとで報告ちょーだい」


インカムからの指示はたったそれだけでも、その中にその信頼がある以上は問題ない。
皆、敵は違うながらにそれぞれの戦場に立っているのだ。


「主、采配を頼みたい」


インカムから聞こえた鶯丸の声に食べかけの弁当に蓋をする。
休み時間などないと言わんばかりのそれを、けれど彼女はどこか楽しそうな表情で受け入れていた。




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