世界を彩る

□#15
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今までの四人と同じような説明をし、質問されたことには答える。
時々代わりに誰かが答えてくれたりしたので織星の負担は対してないに等しい。


「で、今後のことなんですけど」


そう言うと、誰よりも先に幸村が頭を下げた。
まるでタイミングを待っていたかのような素早さに目を見張るが、そんなことを言っている場合でないのも事実だ。


「九殿、どうか某をこちらに置いていただきたい!」
「あ、それはいいんですけど、」


織星の緊張感の欠片もない言葉に幸村はぴしりと頭を下げた姿で固まる。
もちろんそれは元就も同じようで、目を細めて織星を見つめている。


「どうしたらいいですかね?部屋割り」


そう言った織星は本当に困っているようだが、当たり前のようにそう言われては困惑するのは彼らだ。
目をパチクリさせる彼らを他所に、織星は油性ペンとチラシの裏紙を用意すると家の間取りを簡単に書き記す。
一階に一部屋、二階に三部屋と自室。
キュルキュルと嫌な高音をたてて書かれたそれは、単純に一人一部屋は当たらないことを示していた。
そしてそんなことに気づいた矢先に、織星はそれを見つけてしまったのだ。
ひらりと揺れる紙。
立ち上がってそれを掴むとその紙にはたった一文【哀愁の流浪人】とそれだけが書かれていた。
今までは必ず二文書かれていたのだが、今回はそうではなかった。
けれども確かにぞわりとなにかが背を這う感覚に襲われたのだから、どうやらそこに縛りはないようだ。


「ちょっとお前、オレ様をこんなところに連れてきてどうしたいんですかあ?」


気だるい声が織星へ降りかかる。
本当に理屈がわからないくらいぽっと出てくるものだと関心するが、それでこの状況が打破されるわけでもない。
ただ一つよかったと思えるのは、彼が刃物を手にしていなかったことだ。


「えっと、未来へようこそ」


安っぽいライトノベルの書き出しのような台詞を口にした織星。
その言葉にムッと唇を引き締めたその男はぬらりと蛇のようにしつこい視線で織星を見つめる。
心を透かされるようなその視線は居心地が悪いが、逃げることは許されないことであった。

***

武器を持っていないことは一番の幸運だ。
もちろん彼にしたらそれは最大のピンチであるのだろうが。


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