世界を彩る

□#14
1ページ/1ページ


リビングに二人を残し、不安ながらも外に三人を迎えに行く。
早く三人をつれて戻ってこなければと使命感を負う。
玄関の向こうにいる三人を呼ぼうとドアに手をかけた瞬間、勝手に目の前が開けた。
向こう側にいるはずの三人が開けたのだろうが、そこから現れたのは四人の男女。
明らかに一人多いのだ。


「その人は…」


そう言って視線を向けたのは、赤いレザーを着た青年。
その額に巻かれた鉢巻はまるで体育祭の赤組大将のようだ。


「私たちと同じ境遇のやつだ」


そう答えたかすが。
どうやら彼が紙に書かれていた者の片割れだ。


「そうですか。今家の中にも1人現れたんで、その方も混ぜて説明しましょうか」
「申し訳ございませぬ」


しょんぼりとした様子の彼は申し訳なさそうに眉を垂らしている。
けれど謝られるなどお門違いだと告げ、織星は微笑んだ。


「あなたが悪いわけじゃないでしょう?だから謝らないでください」


そう続けると、彼は目を丸くして驚いた。
その言葉はどうやら予想しなかったもののようだ。
もちろん、ほかの三人も驚いたような顔をしている。
特に吉継はいつものいやらしい笑みすらも消えてしまっていた。


「ほら、行きましょう?中にも一人いるんで」


その言葉に目を輝かせた青年。
どうやら予想できる相手がいるようだ。
三人は嫌そうな顔をしているが、どっちみち入らなければいけないのだから仕方ない。
吉継の足に負担をかけないように肩を貸しながらも、織星はこの後広がるだろうカオスを覚悟した。

***

部屋に戻れば、予想外だったが二人は乱闘など繰り広げてはいなかった。
しかしその場の空気は重く、窒息しそうな程だ。
ドアをあけた瞬間かすがの表情が険しくなり、孫市は眉根を寄せた。
変わらないのは吉継のそれだけだ。


「小娘のいうことは本当であったか」


抑揚のない声でそうごちた彼は、ツンと冷たい目で織星を見た。
だが、その目を気にしていないのか織星は「信じてなかったんですか」と不満気に漏らす。
肝が座っているとも取れるその言葉。
けれど織星にそんな意識はなく、本当に言葉通りの意味であった。
もちろんすべてを信じてもらえるわけではないとはわかっていても、まるで嫌味のようにそう告げる。
それは武力では叶うことのない相手への精神的攻撃だ。


「まあ、話しましょうか。今後のことも色々と」


何事もなかったかのように装い、織星はそう切り出す。
色々に含まれる様々な意味を思案しながら、彼らはそれぞれに腰をおろした。


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ