世界を彩る

□#13
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家に着いて早々、織星はあるものを見つけた。
下駄箱にはらりと横たわる紙は、やはり四人が来る前に必ず見つけていたのと同じ紙だ。

【日輪の申し子、太陽に吠える若虎】

そう書かれた紙を拾い上げる。
するとやはり背筋をぞわりと何かが這う感覚。
慣れ始めてはいたが、やはり心地いいものではない。
そしてその瞬間、喉元にヒタリと冷たいものが触れる。
視線を上げれば鋭く光る銀色の円がそこにあり、全身真緑の服を着た男がそこにいた。


「我を連れ出すとは、よほど死に急いでいるようだな」


通る声が射抜くように織星へ向けられる。
その瞳は酷く冷たく空虚で、織星を映す様は硝子玉のようだ。
人間の非情さを体現したかのような彼は、円形の刃物を織星に突き付ける。


「貴様はどこの軍の者ぞ」


疑問符のない問いに織星は納得した。
彼も、彼らと同じ武将で四人と同じ過去の人間なのだと。
けれどもここまで敵意を向けられたのなら、四人の時のように穏やかな解決は望めないだろう。
指先すらも動かすことを許されない現状で、織星は表情を変えずに考える。


「答えぬ気か」


責め立てるように続けられた言葉。
はっとして意識を彼に向けると、その精悍な顔は憎らしげにシワを寄せていた。


「えーと、」


接続詞とも呼べぬそれを発し、織星は言葉を探す。
一目見ただけでも石頭だと思わせる彼に、「未来へようこそ」などと言おうものなら切り捨てられるのだろうか。
ぐるぐるとまた悩むが、そんなことをしている間にどうやら救世主が現れたようだ。
玄関が開き、荷物を抱えた三成が現れる。
その姿を見て、彼はまたシワを寄せるが斬りかからないだけ希望がある。


「貴様、なにをしている毛利」
「石田、お主の方がなにをしておる。我をこんな場所へ連れ出し何用ぞ」


知り合いなのはわかったが、仲が良くないのは目に見えて明らかだ。
武器を持つ者と荷物を持つ者。


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