世界を彩る

□#11
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それなりに大きなデパートに到着した五人。
車の中であらかじめエスカレーターや自動ドア、エレベーターなどがあることを伝えると、四人は言外に伝えられる「驚くな、騒ぐな」を理解した。
自動ドアをくぐり抜けデパートに入る。
あらかじめ店から借りてきた車椅子に吉継を乗せ、五人は自動ドアをくぐる。
その瞬間ピクリと三成とかすがの肩が跳ねたが、叫んだりしないだけまだいいだろう。
そして織星がまっすぐ向かうのは自社ブランドの【BBfly】の店舗だ。
デザインから店の管理まですべてを取り仕切るそれは、織星の誇りでもあった。
そしてなにより、これからの大所帯を支える大事な柱なのだ。


「これから行くお店で一人三つずつ上下を揃えてください。お金のことは気にしないでいいですから」


最初にそう言っておけば、三人はコクリと頷いた。
けれどただ一人頷かなかった吉継はジトリと織星を見つめる。
熱を孕んでいないそれはむしろ「大丈夫なのか」と問うているようだ。
店の敷居を跨げば、店舗内にいた女の売り子がそれぞれに声をかける。
こうして客側に立つことのない織星にとっては中々に新鮮か感覚だが、いきなりの声かけに四人は眉を寄せていた。
どうやらこれは改善が必要なようだ。


「店長います?」


そこら辺にいた店員にそう声をかける織星。
その様子を吉継は目を細めて眺めていた。


「店長ですか?いますが…」
「出してもらえますか? 」
「はい、少々お待ちください」


そう言ってバックヤードに入っていく店員。
時間にして数分で帰って来た店員は誰かを連れていたわけではなく、行った時と同じように一人だ。


「すいません、店長今忙しいみたいで。お話なら伝えておきますが、」
「そうですか。じゃあ"貴蝶が来た"と伝えておいてください」


そう伝言を託し、織星は吉継を連れて彼の服を探しに向かう。
伝言を聞いた店長が息を乱して駆け寄り、腰を90度に折って頭を下げたのはまた少し先の出来事だった。

***

「今お茶買ってきますから、バックヤードで座ってて下さい」
「あぁ、気を使わないで下さい。知り合いの服を買いに来ただけですし」


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