世界を彩る
□#01
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月の綺麗な夜。
怪しい風が窓を揺らす。
ガタガタと鳴くのはあえて鳴るようにネジを緩めてあるからであって、別に家が古いわけではない。
「コピック、B16どこやったかな…?」
薄気味悪い部屋の煌々と電気がつくテーブルで「16、16…」と呟きながらペンを探すのは家主である織星だ。
仕事としているものとは別に、自己満足で書き上げるデザイン画に必要なカラーペンがどうやら見つからないようだ。
ずらりと並ぶ同じタイプのペンを見回しながら、ブルーの16番を探す姿は少しだけ怪しいものにも見えた。
「あった、」
見つけたのは机の下だった。
手を伸ばして取れば指先に触れた紙。
どうやら知らない間に紙も落としていたようで、それを拾い上げればペリと剥がれるような感覚も感じた。
ペンと紙を引っ掴んだ手がパチリと静電気を感じたように痛めば、ぞわりと背中を虫が走るような感覚がした。
「んー…」
気持ち悪いと背中に手を伸ばす。
手の中にあるペンと紙を見れば、紙に書かれていたのは見たことのないものだった。
【月色の乙女、鉛を喰う戦女】
そう書かれていたそれは記憶にない。
ポリ、と背中を掻いたと同時にやはりぞわりと背中を何かが駆け抜けた。
気味の悪さに後ろを向くと、そこには知らない女が二人立っていた。
金髪と茶髪の女。
服装はこの世界では少し特殊なもので、普段使いにはしないものだ。
「えーと、どちら様でしょう?」
危機感もなくそう問い掛けた織星に、二人は眉間に皺を寄せた。
***
警戒心むき出しの彼女たちは、どうやら戦国時代からやってきたようだ。
というのは聞いたわけではなく彼女たちの持っている武器(銃とクナイ)から察したものではっきりとした確証はない。
「えっと、九織星といいます。お二人はどちら様でしょう?」
「雑賀孫市だ。ここはどこだ?」
「私の家です。雑賀さん、あなたがいたのは戦国、えー、安土桃山時代ですか?」
「安土桃山、戦国と呼ばれる世だ。ここは、」
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