自由への翼

□#09
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エルヴィンはゼオとシシーにセンカの受けた傷の理由を話した。
眉を寄せて顔を歪める二人は、その話を聞き終わると眠るセンカの手を握る。


「センカ、おれたちの秘密、少しだけ話すな…?」


さらりとセンカの前髪を撫でたのはシシーだった。
そして問い掛けたゼオはゆっくりと視線をエルヴィン、そしてリヴァイに向けた。


「先に言っておくけど、俺たちは人間だ。間違っても"巨人"だなんて呼ばれる筋合いはない」
「…わかった」
「シシー、」
「わかってるよ」


お互いを見てアイコンタクトを取り、ゼオとシシーはコクリと頷きあった。
そしてセンカが羽を作り上げたあの時のように二人は姿を変えた。
ゼオはその手と足を獣のそれへと変え、鋭い爪は人を切り裂くのには十分なものとなった。
シシーも同じように姿を変えたが、シルエットに大差はなく鱗に覆われた姿となった。


「俺たち三人は普通じゃない」
「だけど巨人でもない。元はただの人間だ」


元はと言う言葉を誇張することに疑問を抱く。
それはかつてという意味で、以前は至極まともな人間だったという意味だ。
とすると考えられるのはこの変化が後天的なものだということ。
研究甲斐がありそうなその事実にエルヴィンはぴくりと眉を動かした。


「君たちが人間であったというなら原因はなんなんだい?」


その問いに、二人は短な言葉を返す。
それはとても単純で、それでいてなによりも複雑な答えだ。


「知らない」


その一言ですべての疑問はなし崩しになった。

***

普通の子だった。
それは事実だ。
ただ、原因不明の流行り病にかかったのが転機だったのだろう。
病は肌から体を蝕み、至る所に奇っ怪な痣を残していく。
それがセンカには羽であり、ゼオには爪であり、シシーには鱗であったのだ。


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