自由への翼

□#06
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センカはいつだって真っ直ぐな目で人を見据える。
例えそれが自分が裁かれる場でも変わらない。


「人類は助けない。人は私を否定する、そして殺そうとする。今までだって何回も殺されかけた。理由なんてなくても、そうだった。そんな人達のために力は使わない。助けてくれた人にだけ、この力を使います」


凛とした声で言うセンカ。
その言葉に青筋を浮かべる兵がいるなか、ザックレーは髭を撫でさするだけだ。


「貴様!よくもそんなことが言える!!」
「じゃあなぜ私はここにいるのです?ここで殺すか生かすか決められるのは私の存在を貴方達が拒絶しているからでしょう?」


彼らの本心を代弁すると、彼らは真っ赤になって口の開閉を繰り返す。
はくはくと吐き出される息は、図星だという真実しか伝えない。


「否定させるのは構わない。けど、その理由が人と少し違うというものなのなら、それは認められない」


鋭い視線がまっすぐにザックレーを射抜く。
寄けることの叶わないその視線は確かに強い意志と覚悟がこもっていた。


「静まれ。センカ=フォーゲルは調査兵団預りとする」


ザックレーの言葉に空気がしんと静まる。
けれとそれに続いた言葉は先の幸福を一掃していった。


「ただし、一週間憲兵団による調査を行ったあとだ」


ギラリと光った目の奥に、センカは無表情な顔を向けた。

***

憲兵団に連れていかれるセンカは一度も調査兵団の方を見なかった。
そして、見る素振りもしなかったのだ。
それはまるで別れを知っているようで、少しだけ切ない。


「なにか言い残すことはないのか」


背を向けたセンカにザックレーがそう声をかけた。
それが何を意味しているのか。
計り知れないまま、センカは口を開いた。


「私の部屋に、福寿草の花があります。それを、どうかミケ分隊長に届けてください」


福寿草という言葉に誰もが疑問を抱く。
けれど、その言葉に返事を返したのはリヴァイだった。


「必ず届ける。さっさと行け」


その言葉にセンカは少しだけ目を細めて安堵した。
後日、福寿草を渡されたミケは小さな声でその花言葉を呟いた。


「永遠の幸せ、か……」


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