この世成らぬ地の

□#11
1ページ/2ページ


妲己と軽くお喋りをした蓮は上機嫌で帰り道を進む。
どうやら彼女の今日のねぐらは不喜処だという。
どうしてまたそんなところかと問えば、どうやら鬼灯の部屋で待っていた時にシロが招待したそうだ。
犬の自分と蓮が同じところに寝ることなどないだろうにと、脳みその足りないシロを思い起こす。
けれど蓮はその誘いに返事を出してしまったようだし、約束をたがうような人ではないことはもう重々承知だ。


「では、ここでさようならです」


そう言って駅で見合うと、蓮はなにかを感じたのかにやりと笑った。
楽しそうな意地悪な笑みはいつ見てもドキリとする。


「鬼灯、寂しいのかい?」
「なぜ、そう思うんです?」
「昔と変わらないからさ」


そう言ってもう高くなった頭を撫でる。
相変わらずさらさらな髪は、手のひらから逃げるように溢れていく。


「鬼灯、また明日」


駅についた電車に乗りながら、蓮はそう言って背を向けた。


.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ