この世成らぬ地の
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妲己と軽くお喋りをした蓮は上機嫌で帰り道を進む。
どうやら彼女の今日のねぐらは不喜処だという。
どうしてまたそんなところかと問えば、どうやら鬼灯の部屋で待っていた時にシロが招待したそうだ。
犬の自分と蓮が同じところに寝ることなどないだろうにと、脳みその足りないシロを思い起こす。
けれど蓮はその誘いに返事を出してしまったようだし、約束をたがうような人ではないことはもう重々承知だ。
「では、ここでさようならです」
そう言って駅で見合うと、蓮はなにかを感じたのかにやりと笑った。
楽しそうな意地悪な笑みはいつ見てもドキリとする。
「鬼灯、寂しいのかい?」
「なぜ、そう思うんです?」
「昔と変わらないからさ」
そう言ってもう高くなった頭を撫でる。
相変わらずさらさらな髪は、手のひらから逃げるように溢れていく。
「鬼灯、また明日」
駅についた電車に乗りながら、蓮はそう言って背を向けた。
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