この世成らぬ地の

□#08
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急遽店を閉め、三人でテーブルを囲う。
とは言っても鬼灯と白澤の間では不可視の火花が散っていた。


「知り合いらしいとは知ってたが、仲が悪いんだねぇ…」


しみじみとそう呟く蓮に、二人はまるで合わせたように同時にそちらを見た。
そしてまったくまるきり声を合わせて悪態を吐く。


「「こんなやつと仲がいいなんてありえない(よ)(です)」」
「クックックッ、そうかいそうかい」


ぴったりと声を揃えたそのさまに笑いがこみ上げた。
噛み殺しきれなかったそれが口から漏れるも、二人はリンクしたことの方が気に食わないのか威嚇しあっている。
まさに犬猿の仲だ。
しかしそれをさも楽しそうに見つめる蓮。
彼女はどうやら彼らのそのやりとりを戯れ程度にしか見ていないようだ。


「まあ、なんにせよ二人に会えて良かったよ。元気そうだしねぇ」


そう言って微笑んだ蓮。
しかし二人はその言葉に笑えなかった。
まるでそれは早々の旅立ちのように聞こえたのだ。


「蓮さん、またどっか行くんですか…?」
「まあ、ここにずっといるわけではないからねぇ」
「今、とかじゃないデショ?」


恐る恐る問う白澤に、蓮は「まあ、今すぐではないよ」と薄く笑って答えた。

***

のんびりと茶を飲んでいる三人。
正式には三人と複数匹のうさぎだ。
うさぎの背やら頭を撫でくる蓮を見つめながら、鬼灯と白澤はコソコソと小さな声で話す。


「白豚さんが蓮さんと関係があるなんて知らなかったです」
「僕だってお前と蓮ちゃんが知り合いなんて知らなかったよ」
「じゃあ私の方に先に会いに来てくれましたし、私の方が良い弟子ということですね」
「は?说着什么(なに言ってるの)?そんなわけ無いじゃん」
「どうでしょうか?私の方が先に会いましたし、帰って来てからは食事も一緒に食べましたし」
「お前みたいな短い付き合いじゃないからね。後回しにされたとしても絆が深いの!」


キイッと歯を向く白澤。
いつも通りの鉄火面な鬼灯はその言葉に無言で腕を振り降ろす。
チョップという形で脳天を攻撃されれば、やはり苦悶の表情を浮かべてうずくまるしかなかった。


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