この世成らぬ地の

□#06
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シロと小一時間ボール遊びをしたらしい鬼灯は、先のごとく閻魔をしばき倒すと蓮を連れて地獄の門へ向かう。
今だ手を引かれる形の蓮は少しばかりくすぐったい気持ちになった。


「これじゃあ介護されてるみたいだねぇ」
「やめてください。まだ若いでしょう」
「若いなんて言えないよ。もうクソババアだ」


クックッと笑う蓮とそれを少しも、いやひとつも納得していない目線で見る鬼灯。
それを見てまた笑う蓮。


「いいかい鬼灯、私はお前たち鬼なんて生き物が生まれる前からいるんだ。それがまだ若いってんなら、あんたたちはまだまだヒヨッコ。精子と卵子もいいところだよ」


やけに楽しそうに話す蓮。
その言葉につくづく子供扱いされていると感じる鬼灯だが、実際問題蓮の方が何回りも年上なのだ。
仕方ないと思いつつも納得しきれない気持ちがどうも鬼灯のなかでは未消化なようだ。
沈黙が流れる二人の間。
蓮はさして気にしていないようだが、鬼灯は気にしないわけにもいかないようだ。
子供扱いされたのだ。
自立はできている自信があった。
時間はないが、金と権力はあるし自立もできているし、見た目だった悪いとは思っていなかった。
それがこんな落とし穴に引っかかるなど、と心中で嘆く。
幸か不幸か他人とは違う見られ方をしているのはわかっていたが、それでもやだ子供というカテゴリーに入れられている事実は、蓮に恋心を抱く鬼灯には歯痒くて仕方が無い。

***

天国に着けばその清々しい爽やかな空気に心が軽くなった。
まるで浄化されているような心地だ。
まあしかしながら実際、鬼灯も蓮も浄化されれば何も残らない性質なのだが。


「さて、あの子はどこにいるかねぇ」


まるで愛しい子を探すようにいう蓮。
疎外感と嫉妬に眉間にシワを寄せる鬼灯だが、本人は無意識なようだ。
嫌悪にさらに磨きがかかった。


「チッ、白豚め…」


悪魔がついたような険しい顔で悪態をついた鬼灯。
蓮はそれを見て見ぬ振りをしてまた白澤探しを続けた。


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