この世成らぬ地の

□#05
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時の流れは早く、シロと会って二時間後。
宣言通り縛り上げたのだろうか。
少しばかりすっきりとした表情の鬼灯が部屋へと戻ってきた。


「お帰り、鬼灯」
「お待たせしました。おや、シロさん。どうかしましたか?」
「鬼灯様に会いに来た!!!」


パタパタと尻尾を振るシロに、鬼灯は目に優しさを宿らせる。
その姿は素晴らしく貴重な姿だ。


「そうですか。でも今日は先約がいますので」
「あぁ、構わんよ」


やんわりとシロを優先するように言えば、鬼灯は無表情のままに短く返事をした。


「そうですか。じゃあ一時間ほどシロさんと出掛けてきます。どこか外に出ますか?」
「…いや、殿内にいるよ」


少し考えてから答えを出せば、少しばかり名残惜しそうに出ていく鬼灯。
その後ろ姿に笑みを溢しながら、蓮は閻魔大王がいるだろう本館に向かった。

***

すれ違う獄卒から向けられる視線は様々だ。
疑問から好奇まで、きっと言葉に表すのなら表現の数など足りはしないだろう。
しかし蓮はその目に不快感を抱くでもなく、しゃんと胸を張ってその通路を歩く様はまるで遊女の花道のようだ。


「お、閻魔」
「あ、蓮ちゃん。どこ行ってたの?」


一段落したのか、コーヒーを飲む閻魔大王。
その様子を見たなら鬼灯ならば迷うことなく金棒を降り下ろすのだろうと思いながら、蓮は笑みを浮かべてその姿を見た。


「短期間の軟禁だよ」


おどけて返せば、閻魔大王は困ったように笑う。


「鬼灯くん、蓮ちゃんのこと大好きだからね」


その言葉には些か語弊があるように感じるが、深く追求や訂正などはしなかった。
もちろん、してもいいのだが一々構っていられるほど困るような話でもないし、そうであると理解していた。


「かわいいもんさ」


ふっと鬼灯の懐かしい、幼いころの姿を思い出し緩む頬。


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