この世成らぬ地の

□#02
1ページ/1ページ


唐突で衝撃的な再会からいくらか時間が経った時、鬼灯の仕事も一段落したのだろう。


「戻って来ると連絡をくれたら迎えに行きましたよ」


そう言った鬼灯に蓮は妖しく笑った。


「随分とイイ男に育ったもんだねぇ」
「そうですしょうか?」
「ああ、もう一人の馬鹿弟子を思い出すよ」


クックと喉で笑いながら話す蓮に、鬼灯は疑問を感じた。


「もう一人…?」
「ん?言ってなかったか?私の弟子はアンタともう一人いるって」
「聞いてません。どこの誰です?もう一人って」
「天国の白澤っつー中国妖怪だよ」


サラリと言われた事実に、鬼灯は金棒で頭を殴られたようなショックを覚えた。
理由は明解、もう一人は因縁のあいつなのだから。


「あの白豚さんと私が兄弟弟子?!」
「なんだい、もう会った事があったのか」


ケロッとして言う蓮に、鬼灯は無表情のままうつむき、ワナワナと震える。
されど蓮はそれに気付くことはない。


「ごちそーさま。さてと、」


ペロリと平らげたXLサイズの昼食、もとい金魚草の照り焼きどんぶり定食の前で両の手を打ち合わせた。
そしてそれを片付けようと手を伸ばすと、素早く伸びた鬼灯の手が正面からかっさらっていく。


「片付けてくれてんの?」
「はい。それと、一時間程ここで待ってて下さい」


両手にお盆を持って鬼灯はそう言い残した。
yesの返事など聞かないままに一人さっさと食堂を出て行ってしまう後ろ姿へ、蓮は笑みを1つ溢してその姿を見送るしかできなかった。


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ