抜き身に気を付けて

□#20
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インカムの向こうから聞こえるのは大股で土を踏みつける音。
音がくぐもっているのは、ポケットに入れられたままだからだろう。


「好きでこの仕事してるわけじゃない!!!」


術の発動する時の特殊な風を着る音に紛れて聞こえた声。


「この仕事しか与えられなかったからやってるんだよ!!歴史なんてどうでもいい!むしろ変えてよ!!」


敵の唸り声に紛れて、本音がこぼれ出す。
ジャリジャリと砂土を踏みつける音が煩い。


「審神者なんてやりたくない!!また、また、大切な子達が折れていくっ!!!」


絶望が言葉になる。
敵の呻き声がざわざわと木々を揺らす。


「お前達みたいになりたいよ。望まれてない本丸で暮らすことが、どれだけ地獄か。わかってくれる…?」


ゴボゴボと血の泡立つ音が近い。
ジジッとノイズの入るインカムに彼らは不安を抱えた。


「さあ、て。私を殺してくれるところへ行こう」


その言葉を最後に、インカムはノイズ音だけしか伝えなくなった。
ボス戦が終わっても戻ってこない彼女に、彼らはとうとう泣き出す。
特に小狐丸はその体を小さく丸め、嗚咽を繰り返す。


「っ、私のっせいで……っ!!」


グズグズと鼻をすする彼。
彼に続くようにして後悔の念に苛まれる背中たち。
けれどそんな彼らの後悔を切り捨てるように門が開いた。


「なぁにしてんの?」


血塗れで帰ってきた忍。
いつも通りの間延びしたやる気のなさそうな声に彼らはみっともない顔を向けた。


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